2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23750028
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
安池 智一 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10419856)
|
Keywords | 界面光分子科学 / 励起状態 / 電子寿命 / 開放系 / クラスターモデル / プラズモン |
Research Abstract |
量子開放系電子状態理論に基づいて様々な系のモデリングを行うために,密度汎関数法に基づく量子開放系電子状態計算プログラムに環境の効果を取り入れる手法を導入した.その第一はイオン結合性で正負の電荷が周期的に存在する場合に部分系が外部から受ける Madelung ポテンシャルである.Madelung ポテンシャルの導入により,実用上有用な酸化物半導体表面についてもモデルクラスターのサイズに依存しない電子状態の記述が可能となった.また,溶媒を分極連続体として記述する Polarizable continuum model (PCM) を導入することにより,固体液体界面のモデリングが可能となった.これらの手法の導入により,実際に利用されている光機能界面の環境に則したより現実的なシミュレーションが実行可能となった. 具体的な応用計算は未だテスト段階にあるが,色素増感太陽電池のモデル系として,酸化チタン表面に吸着した色素分子の問題についてMadelungポテンシャルの影響を考慮することによる励起状態の電子移動速度の依存性の変化を調べ,その重要性を確認している.また,PCMを考慮した開放系電子状態計算によって実際の電極反応,特に金電極への銀イオンのアンダーポテンシャルデポジションと呼ばれる現象を半定量的に議論できることが明らかとなっている.また,これらの方法論の開発と並行して増感物質の設計についても取り組み,小さな11族元素クラスターのプラズモン励起の最適化によって各種光学応答の大幅な増感が可能であることを数値計算によって実証した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では光機能界面の機能設計を視野に入れたシミュレーションの基板技術の確立を目的として,本研究代表者が最近開発した開放系電子状態理論に基づく第一原理電子状態計算プログラムの拡張をはかり,光の関与する界面分子素過程の理論解析を低い計算コストで実現可能とすることにある,本年度は,モデルクラスターに対する環境の効果を適切に考慮するためのモデリング手法との融合によって,より実在系に近いモデルの計算が可能となるようプログラムの開発を行った.Madlungポテンシャルの導入によって酸化物半導体表面が,連続誘電体モデルによって固体液体界面の問題が扱えるようになり,それらの有効性をテスト計算によって実証することに成功した.また,色素物質の理論設計にも大きな進展が得られ,これらを総合的に判断することにより,現在までの達成度としては,おおむね順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,これまで開発してきたプログラムを最大限に活用して,光機能界面の理論設計に取り組む.先ず第一に,光励起によって誘起される励起吸着分子から金属半導体表面への電子移動の速度を司る原理を明らかにし,高効率な光機能界面の設計指針を得る.このために,真空中の清浄表面に吸着した分子という理想的な系を対象に実験家との緊密な議論を通じて原理の理解を図る.この結果に基づいて,実際の光機能界面の設計のための,より実際的な動作条件に則したシミュレーションを行う.その際,適宜計算プログラムのよりよい超並列計算機上での実装に向けて改良を行う.また,前年度から開始した増感物質の探索についてもさらに検討を進める.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度の中途で最終年度は研究代表者の所属が変更となることが決定し,これにより計算機環境が低下することが明らかとなった.このため,デスクトップ型PCのアップデートに確保していた予算を最終年度に持ち越すことで,計算環境を少しでも改善することとした.最終年度は,応用計算を研究の中心と予定していることから,計算機環境の確保は重要であり,70万円程度を計算機更新に充てる.予算の残りは出来るだけ旅費に充てることにより,研究成果の積極的な発信に努める.
|
Research Products
(4 results)