2012 Fiscal Year Research-status Report
内殻軌道から2つの電子が電離した分子に関する理論的研究
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23750029
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
田代 基慶 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 特任助教 (10447914)
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Keywords | 内殻電離 / X線自由電子レーザー / 放射光 / オージェ電子 |
Research Abstract |
現在世界各地でX線自由電子レーザー施設 (XFEL)が建設中・稼働中であるが、XFELを利用すると分子の内殻軌道から2つの電子が電離した新しい状態(二重内殻イオン化状態)を容易に生成することができる。既にいくつかの分子については二重内殻イオン化状態(DCH状態)が検出されているものの、その基本的な性質・振る舞いはあまり理解されていない。 前年度までで我々はDCH光電子スペクトルに見られるサテライト状態の計算を行い、実験結果との比較、通常の一電子内殻電離光電子スペクトルとの違いなどを議論した。また、DCH状態の崩壊によって生じるAuger電子のスペクトルを計算する手法の開発を行った。 本年度は引き続きAuger電子スペクトルの研究を進め、C2H2などの実験結果との比較を行った。また、Auger電子スペクトルに対する分子の核運動の影響も考慮してスペクトルの計算を行うことが出来るようになった。これらの計算を行う技術・手法を有しているのは世界でも我々のみであり、海外実験グループとは緊密な共同研究を遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題次年度以降の計画項目、(1)Auger崩壊過程、(2)分子の解離過程、(3)X線発光による崩壊、の全てについて研究を進めることができた。特に、(1)(2)に関しては、実験グループとの共同研究を通じて論文発表、海外学会での招待講演などに結びつけることができた。(3)についても現在論文が印刷中であり、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で進めてきた課題、すなわちDCH状態のAuger崩壊およびX線発光による崩壊過程の理論的解明を進め、実験結果との比較を通じて理論の検証を進める予定である。また、これまで手を付けていなかったX線パルスと分子の相互作用過程についても研究を進める計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に共同研究遂行・成果発表のための旅費として研究費を使用する計画である。また、計算機を購入し、より大規模な系での検証を進める予定である。
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Research Products
(4 results)