2013 Fiscal Year Research-status Report
内殻軌道から2つの電子が電離した分子に関する理論的研究
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23750029
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
田代 基慶 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 特任助教 (10447914)
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Keywords | 内殻電離 / X線自由電子レーザー / 放射光 / オージェ電子 |
Research Abstract |
近年、放射光に多重電子計測技術を組み合わせた手法及びX線自由電子レーザーなどの技術的発展により、分子の内殻軌道から同時に2つの電子が電離した状態(二重内殻電離状態,DCH状態)を実験的に測定できるようになってきた。我々はこの分子DCH状態について、電離エネルギーと分子種の間の関係、オージェ電子スペクトルの理論的解釈などについて取り組んできた。今年度も引き続き、DCH生成・崩壊に関連する基礎的な過程についての研究を行った。1.分子種とDCH状態電離エネルギーの関係をより詳細に調べるため、電離サイトが分子の片側に偏っている場合と両側にある場合について様々な分子についての計算を行った。2.幾つかの分子について、DCHオージェ電子スペクトルの実験結果との比較検討を行った。3.DCH状態が生成した後の崩壊モードとして、これまでオージェ崩壊のみを考慮していたが、X線発光による崩壊について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに、本研究課題の計画項目に挙げられている「X線発光による分子DCH状態の崩壊」について研究を進め、観測されるX線スペクトルの形状を理論的に予測、single core-hole状態崩壊によるX線発光スペクトルとの違いを議論した。また、分子種・環境とDCH状態の電離エネルギーの関係についても、理論的理解を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、国内外の実験グループとの共同研究を進め、実験で得られるDCH状態電離エネルギー・Augerスペクトルなどの理論側からの解釈を手掛ける予定である。また、X線自由電子レーザーにで行われているpump-probe的実験に関して、理論計算でどのような情報が得られるのか研究を進める計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たに計算機を導入して理論計算に使用する予定であったが、今年度の計算規模では従来から使用してきた計算機で間に合ったために導入を先送りにした。 主に、成果発表に用いる旅費に研究費を使用する計画である。また、今後は以前よりも規模の大きな分子・物質を対象に理論計算を行う予定であり、これらの対象を扱うための計算機導入にも研究費を使用する。
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Research Products
(6 results)