2011 Fiscal Year Research-status Report
高活性、高立体選択性、リビング重合を実現する究極のポストメタロセン触媒の開発
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23750034
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中田 憲男 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50375416)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ポストメタロセン / オレフィン重合 / 前周期遷移金属錯体 / [OSSO]配位子 / 高分子 |
Research Abstract |
本研究では、独自に開発したtrans-シクロオクタン環を有する混合ドナー型[OSSO]四座配位子を用いた一連の前周期遷移金属錯体を合成し、α-オレフィンの重合反応において長年の課題であった高活性、高イソ選択性、リビング重合の三点を同時に達成する究極のポストメタロセン触媒の開発を目的としている。今年度はまず、[OSSO]四座配位子を有する種々のチタン錯体や5族遷移金属であるバナジウム、ニオブならびにタンタル錯体の合成に成功し、これら錯体の分子構造解明だけでなく、1-ヘキセンの重合反応を検討した。その結果、ジクロロチタン(IV)錯体、クロロ架橋チタン(III)二核錯体ならびにトリクロロタンタル(V)錯体において触媒活性が発現し、それぞれ対応するポリ(1-ヘキセン)をほぼ完全なイソタクティシティーで与えた。しかしながら、重合活性は対応する[OSSO]四座配位子を有するジルコニウム錯体やハフニウム錯体に比べかなり低いものであった。次に、重合に使用するα-オレフィンの汎用性を検証するため、[OSSO]四座配位子を有するジクロロジルコニウム(IV)錯体を用いた種々のα-オレフィン重合を検討した。まず、1-ヘキセンの重合反応では、ジルコニウム(IV)錯体と乾燥メチルアルミノキサン(dMAO)との組み合わせがこれまでの配位重合触媒を驚愕する高活性(18,000 g mmol-1 h-1)かつ高イソ選択性(mmmm >95%)を同時に達成した。また、1,5-ヘキサジエンを用いた環化重合反応においても、trans-イソ選択的に対応する環化ポリマーであるポリ(メチレンシクロプロパン)が生成し(α = 75%、σ = 19%)、また重合活性においてもすでに報告されている[ONNO]四座配位子を有するジルコニウム錯体よりも16,000倍以上大きな値であった(810 g mmol-1 h-1)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、配位重合触媒の長年の課題であった高活性、高イソ選択性、リビング重合の三点を同時に達成するシングルサイトポストメタロセン触媒の開発を目標に挙げているが、現在までのところリビング重合以外の二点の特徴を併せ持つ重合触媒の開発に成功しており、特にその重合活性においては、これまでのポストメタロセン触媒をはるかにしのぐ高活性な触媒系であることを見出しており、次年度の研究目標であるα-オレフィン同士のブロック共重合化反応へ技術転換に向けて達成可能な知見であると考えている。特に使用するα-オレフィン同志での重合活性の違いは、モノマーを逐次的に添加することによって、分子量、分子量分布、ブロック連鎖などの一次構造を精密に制御できると考えており、またイソ選択的な重合反応は新たな二次構造を生み出すための必須条件であり、これらを伴った新しいブロック共重合体の構築を目指していく。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、開発した[OSSO]四座配位子を有するジルコニウムやハフニウム錯体を前触媒とした汎用性の高いモノマー(エチレン、プロピレン、スチレンなど)のイソ選択的重合反応の開発を検討する。次に、これらの触媒システムをα-オレフィン同士のブロック共重合化反応へ技術転換し、モノマーの逐次添加による分子量、分子量分布、ブロック連鎖などの一次構造を精密に制御し、また新たな二次構造を生み出す高イソ選択性の発現を伴った新しいブロック共重合体の構築を検討する。具体的には、1-ヘキセンとプロピレンをモデルモノマーとして共重合反応に使用し、二次構造発現に必要な高イソ選択性の達成を目指した触媒と重合条件の最適化をスクリーニングしていく。また、最適化された触媒と重合条件を他のα-オレフィン同士(プロピレンやスチレン)あるいはエチレン、ジエンとの共重合反応に応用し、新規なブロック共重合体の構築に挑戦する。生成が予想されるブロック共重合体はこれまでに例のない新規なポリマー群であり、分子量分布測定だけでなく諸物性(ガラス転移温度、屈折率、密度、曲げ弾性率など)を明らかにしていく。なお、本研究が計画通りに進まない場合においては、[OSSO]四座配位子におけるフェノキシド部位の見直しを考えている。[OSSO]四座配位子には触媒系全体をC2対称とし、立体選択性の発現を促す目的でフェノキシド部位の2位と4位に嵩高い置換基であるt-ブチル基を置換してあるが、これらの置換基をさらに立体的に大きいもの(アダマンチル基やトリメチルシリル基)や小さいもの(メチル基)へ、あるいはクロロ基のような電子的効果を睨んだものへと変換し、置換基変換による本研究の達成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究経費の使用計画として、主に有機金属試薬、有機溶媒、重水素化溶媒、特殊ガラス器具(高真空マニフォールドやシュレンク型フラスコやシュレンク型試験管)、ならびに高純度アルゴンなどの消耗品に充てる予定である。加えて、本研究成果を国内だけでなく世界の研究者に発表・アピールするため、2件の国際学会(均一系触媒の国際シンポジウム:フランス・トゥルーズ、有機金属化学の国際会議:ポルトガル・リスボン)に参加し、これらの旅費として使用を考えている。
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