2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23750038
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
瀬川 泰知 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (60570794)
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Keywords | カルベン / ピリジリデン / 配位子 |
Research Abstract |
本研究は、新化学種である「ピリジリデン」の基礎的な性質解明および応用展開を目的としている。最終年度においては、ピリジリデンの遷移金属触媒化学への応用を指向し、さまざまな構造の配位子を設計し錯形成を行なった。ピリジリデンは、よく知られた配位子であるNヘテロ環カルベン配位子と比較して、電子供与性と安定性に優れていることが期待できる。これを多座配位子にすることができれば、非常に過酷な反応条件においても安定に触媒活性をもつ有用な触媒分子となることが予想できる。 安定な5員環メタラサイクルを形成する配位子である2,2'-ビピリジルを参考に、これの等電子体となる二座ピリジリデン配位子を設計した。遷移金属への配位方法は、炭素塩素結合の酸化的付加反応を第一段階とし、続く分子内炭素水素開裂反応を第二段階とした。これによって、ピリジリデンという不安定化学種の単離行程を回避することができるため、簡便にさまざまな遷移金属へ配位させることが可能となると考えた。 種々の条件を検討したところ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムに対して、炭素塩素結合をもつピリジリデン配位子前駆体を、塩基である炭酸セシウム存在下で作用させたところ、2つのピリジリデンがシス位でパラジウムに配位した二座ピリジリデンパラジウム錯体の合成に成功した。錯体中において2つのピリジリデンは5員環パラダサイクルを形成して強固に配位し、非常に平面性の高い構造をとっている。この錯体は市販の試薬からわずか3段階で合成できるため、応用を指向した際の潜在的有用性は非常に高い。
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