2011 Fiscal Year Research-status Report
弱いπ結合を有する新しい開殻π電子系の創出と機能開発
Project/Area Number |
23750040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 章弘 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30584263)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ラジカル / ビラジカル / 一重項ビラジカル / π共役系 / π電子系 / インデノフルオレン / キノジメタン / 近赤外吸収 |
Research Abstract |
一重項ビラジカルの研究として、o-キノジメタン構造を有するインデノ[2,1-a]フルオレンの合成を行い、単離に成功した。これまで p-キノジメタン構造を有する一重項ビラジカルの研究は盛んに行われてきたが、o-キノジメタン構造を有する化合物の研究は分子の不安定性のためにほとんど行われていなかった。今回、分子を安定化する分子設計を行うことで、小さい一重項ビラジカル性を有することを初めて実験的に明らかにした。この化合物はπ電子の数が20個と非常に少ないにも関わらず、優れた電気化学特性、光学特性を有することを明らかにした。 巨大π電子系化合物の新奇な合成法の開発を目的として、インデノ[2,1-a]フルオレンの二量化を検討したところ、期待通りに反応が進行し、シクロオクタテトラエン構造を有する新奇π共役化合物の合成に成功した。 インデノ[2,1-a]フルオレンの構造異性体であり、m-キノジメタン構造を有するインデノ[2,1-b]フルオレンの合成を行い、単離に成功した。この化合物は中程度の一重項ビラジカル性を有し、非常に優れた電気化学特性、光学特性を示した。電子吸収スペクトルでは、近赤外領域にまで吸収が観測されており、長波長領域の吸収を実現する全く新しい分子設計指針を提案できると考えている。現在、長波長領域の吸収の原因を量子化学的な観点からも明らかにしようと研究を進めている。 シクロブタジエンモデルの新奇炭素π共役分子も合成に成功した。この化合物も優れた光学特性を示した。現在、化合物の大量合成と、各種測定により基底状態の電子構造を詳細に解明するべく、研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一重項ビラジカルの研究として、比較的小さいπ共役化合物を用いた研究は順調に進行している。分子の不安定性のために合成が難しいと考えられていたインデノフルオレン誘導体を2つ単離し、その電子構造を詳細に議論できたことは大きな成果である。また、一重項ビラジカルの研究の新しい展開として、高い反応性を利用した新規π共役化合物の合成にも成功している。 シクロブタジエンモデルの新奇炭素π共役分子も合成が困難であったが、ようやく合成を達成した。今後、さらなる研究の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
一重項ビラジカルの研究としては、インデノ[2,1-b]フルオレンの長波長領域の吸収の理由を解明することが最大の課題である。これまでに研究されてきた一重項ビラジカルや同程度のπ共役長を有する様々な化合物の量子化学計算を行い、長波長領域の吸収の理由を詳細に解明することで、長波長領域の吸収を実現する全く新しい分子設計指針を提案したい。また、インデノフルオレンのπ共役系を拡張した様々な誘導体についても研究を行い、一連の化合物群の基礎物性を明らかにする。 シクロブタジエンモデルの新奇炭素π共役分子については、各種測定により一重項ビラジカル性、テトララジカル性を議論する。また、量子化学計算を駆使して、基底状態の電子構造を詳細に解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大部分は化合物の合成に使用するので、主な支出は物品費 (試薬・溶媒代、各種実験器具代) である。また、実験結果を取りまとめ、国内および国際会議での発表を行うための旅費を計上している。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Synthesis, Crystal Structure, and Physical Properties of Sterically Unprotected Hydrocarbon Radicals2011
Author(s)
Takashi Kubo, Yoshiki Katada, Akihiro Shimizu, Yasukazu Hirao, Kazunobu Sato, Takeji Takui, Mikio Uruichi, Kyuya Yakushi, Robert C. Haddon
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Journal Title
J. Am. Chem. Soc.
Volume: 133
Pages: 14240-14243
DOI
Peer Reviewed
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