2011 Fiscal Year Research-status Report
新規キラル有機塩基触媒の開発及び直接的不斉アルドール反応への応用
Project/Area Number |
23750046
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
御前 智則 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (00411786)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 合成有機化学 / 不斉有機触媒 / 不斉合成 / 不斉反応 |
Research Abstract |
直接的不斉アルドール反応の開発を念頭に置き、平成23年度では新しい有機塩基触媒の開発及び、求核剤基質の探索に注力した。まず、ホスファゼン類を組み込んだ新しい不斉有機触媒の合成の試みでは、P1ホスファゼンとグアニジンを組み合わせたキラル有機塩基化合物を2種類合成する事に成功した。しかし、一つはある程度の量を単離することに成功し幾つかの反応に用いたが、化合物自体が立体的に嵩高いせいか、塩基触媒としての活性は非常に低いものであった。もう一つは合成過程の幾つかの段階が低収率であり、反応に用いるには至っていない。求核剤基質の探索では、交付申請書に記載した計画に従いα位の酸性度や、反応後の誘導化等についても考慮した上で、種々の新しい基質の設計及び合成を行い、その評価としてDBUや、P1ホスファゼン塩基等のアキラルな塩基触媒を用いた反応の検討を行った。その結果、当初計画していたタイプの単純脂肪酸から誘導化した求核剤基質では有望な化合物を見出すには至らなかったが、ある種のアズラクトン類で、直接的なビニロガスアルドール反応が首尾よく進行することを見出した。この求核剤基質の酸性度は十分に高く、計画していたホスファゼン等ではなく、グアニジンでも速やかに反応が進行したため、現在キラルグアニジンの立体選択性に対するチューニングを行っている。エナンチオ選択性は現段階では30% ee程度であるが、syn/anti選択性に関しては非常に高く、グアニジン触媒によっては、99 : 1以上の選択性を達成している。尚、この新しいビニロガスアルドール反応で得られる付加体は、その後の誘導化により有機合成化学的に非常に重要なキラルα-ヒドロキシ酸誘導体へと容易に導く事が出来ると考えており、この開発に成功すれば、既存法では合成が困難なキラルα-ヒドロキシ酸類の合成も容易になると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
触媒合成においてホスファゼン部位を組み込む事が予想以上に困難である。ホスファゼンを組み込んだ触媒自体が嵩高くなってしまい、想定していたほど触媒活性が高くなく、計画していた求核剤基質の脱プロトン化が殆ど進行していない。以上のことから、ビニロガスアルドール反応の検討も平行して行い、ある程度成果が出始めているが、エナンチオ選択性を改善するためにある程度時間が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた、単純脂肪酸誘導体の直接的アルドール反応の開発では、触媒合成の困難さ、触媒自体の不十分な反応性、また求核剤基質の低い酸性度など、幾つか問題点がある。これらは以前から想定しており、対応策も考えていたが、一年間検討を行った結果、想定以上に困難である事が分かった。今後もこれら問題点の解決を検討していく計画であるが、平行して、この一年の検討で見出したビニロガスアルドール反応の開発にも注力する計画である。この反応の検討では特に、様々な骨格や、構造をもつキラルグアニジンを新に合成し、これらを反応に用いる事により、エナンチオ選択性を改善する事を考えている。そしてこの反応を、新しいキラルα-ヒドロキシ酸誘導体合成法としての確立することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現段階では、エナンチオ選択性が不十分であり、改善が必須である。改善法として様々なキラルグアニジンを新に合成し、これらを反応に用いる事を計画しているが、このためには、多種類の試薬の購入が必要である。高価な、キラル化合物の購入も必要である。
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