2012 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-リン三重結合種を鍵試剤として用いた多環式芳香族化合物の系統的合成法の開発
Project/Area Number |
23750051
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
長洞 記嘉 福岡大学, 理学部, 助教 (30402928)
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Keywords | 芳香族化合物 / 環化付加反応 / 複素環化合物 |
Research Abstract |
平成24年度は新規含リン芳香族化合物の合成法探索とそれらの基礎的性質の解明を行った。まず、リン原子を含む三重結合化学種とジエン等価体との環化付加反応を検討した。リン原子を含む三重結合化学種は文献既知の3級ブチルおよびアダマンチル置換体を用い、ジエン等価体としてはクマリン、シクロヘキサノンおよびベンゾチオフェンジオキシドなどを採用した。反応を行い反応混合物の31P核磁気共鳴スペクトルを観測したところ、低磁場領域にシグナルが観測され、目的とする芳香族化合物の生成を支持する結果が得られた。次に、遷移金属触媒を用いたリン原子を含む三重結合化学種とジエン類との環化付加反応を検討した。反応を31P核磁気共鳴スペクトルで追跡したところ、リン原子を含む三重結合化学種の消失は確認されたものの、芳香族物質に特徴的な低磁場領域の共鳴は見られず、目的の反応は進行しなかったと考えられる。 次に、合成した新規含リン芳香族化合物の基礎的な性質を明らかにするために、紫外可視吸収および発光スペクトルの測定を行った。4位に各種アリール置換基を有する2,6-ジブチルホスフィニン誘導体では、吸収極大が約300nm、発光極大が約320nmに観測され、この吸収波長は分子軌道計算の結果とも良く一致しており、ホスフィニン類の許容遷移であるHOMO-LUMO遷移であることが明らかになった。さらに電気化学特性を評価したところ、+1.2V付近に不可逆な酸化波を、-2.0Vに可逆な一電子還元波を示すことがわかった。つまり新規なリン原子を含む芳香族化合物類の特性を明らかにすることに成功した。
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