2011 Fiscal Year Research-status Report
メリライト型化合物を中心とした新規低次元物質の合成と物性解明
Project/Area Number |
23750052
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
土井 貴弘 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20359483)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | メリライト / 複合アニオン化合物 / 低次元磁性 / 磁気秩序 / d-f電子間磁気相互作用 / 磁気フラストレーション / マルチフェロイック |
Research Abstract |
本課題では層状構造をもち、組成の自由度が極めて高いメリライト関連化合物A2MM'2X7(A =アルカリ土類金属等、M, M' = 遷移金属等、X = O, S)に注目し、新規物質の開拓を試みるとともに、遷移金属のスピン挙動を系統的に理解することを目的とした研究を実施し以下の成果を得た:【二次元反強磁性体Sr2MGe2O7 (M = Mn, Co)の磁気構造解析】 メリライト型酸化物Sr2MGe2O7の磁化率および比熱測定を行い、それぞれ4.5 K, 6.5 Kで反強磁性転移を起こすこと見出した。その磁気的挙動の詳細を明らかにするため、粉末中性子散乱実験を行った。観測された磁気ブラック反射から磁気構造を決定することに成功した。両化合物とも秩序化した磁気モーメントはコリニア配列をとるが、磁性イオンの異方性を反映した配列の違いを示すことを見出した。【アニオン置換型メリライトの新規合成と磁気的性質】 Mサイトに磁性イオンをもつSr2MGe2S6O (M = Mn, Fe)、およびM, A両サイトに磁性イオンを含むEu2MGe2S6O(M = Mn, Fe)の新規合成に成功した。いずれも正方晶メリライト型構造をとり、アニオンが秩序化配列していることが明らかとなった。Sr2MnGe2S6Oの磁化率測定の結果、有効磁気モーメントからMn2+イオンがS=5/2の高スピン状態にあり、Mnの反強磁性転移を示すことが明らかとなり、また、比熱では長距離秩序化を示すλ型の二次相転移による異常が観測された。一方、Eu2MnGe2S6Oは、磁化率が2.3 Kで異常を示すのに対して、比熱は15.0 Kでも異常を示し、EuとMnの段階的な磁気秩序を示す事を見出した。この結果は、同型の酸化物とは異なる磁気的相互作用の存在を示唆しており、複合アニオン化による磁性の制御へと繋がる大きな成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで明らかになっていなかったメリライト酸化物 Sr2MGe2O7 (M = Mn, Co)の磁気的性質の詳細を明らかにすることに成功した。(T. Endo et al., Inorg. Chem., 51, 3572-3578 (2012)) この化合物の磁気的性質は、本研究課題にて取り扱う物質の性質を理解するための基礎となる知見であり、大きな一歩となる成果として位置づけられる。 さらに、メリライト化合物の物性を大きく変化させるために複数のアニオンを持つ化合物の新規合成を試み、酸化物と同構造を持つオキシ硫化物の合成に成功した。その磁気的性質は従来の酸化物よりも転移温度が高く、また、ランタノイドの4f電子と遷移金属のd電子との磁気相互作用も大きく変化することが明らかとなり、このアニオン置換のアプローチがメリライト化合物の物性制御に極めて有効であることを示し、今後の研究展開に繋がる重要な成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
アニオン置換化合物(オキシ硫化物)を対象とした新物質探索とその物性解明を継続して展開する。導入する酸素/硫黄比を変化させることで、異なるタイプのアニオン配列を持つ化合物を合成し、磁性イオン間の超交換相互作用を制御することで、更なる特異な磁性を見出すとともにその機構の解明を目指す。 通常、非磁性のイオンが占有するM'サイトへ磁性イオンを導入し、幾何学的な磁気フラストレーションを示す磁性イオン配列をもつ新規メリライトの合成を目指す。特に、真空封入や反応雰囲気制御による合成方法や、関連構造を持つ化合物に対するトポタクティックな還元反応を利用した方法を試みる。 これまでに得られたメリライト化合物に対して、インピーダンスアナライザとPPMSを用いた誘電率測定を行い、マルチフェロイック発現の可能性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
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Research Products
(6 results)