2012 Fiscal Year Annual Research Report
二種類の活性結合を持つ新しい金属/ケイ素錯体の反応性の解明と触媒への応用
Project/Area Number |
23750053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小室 貴士 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20396419)
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Keywords | 金属/ケイ素錯体 / η3-α-シラベンジル錯体 / モリブデン錯体 / 三員環錯体 / 不飽和有機分子 / ヒドロシリル化 / C-O結合開裂 / 触媒反応 |
Research Abstract |
1 (η3-α-シラベンジル)モリブデン錯体1とアルキル置換基を持つアルデヒドとを反応させると,1の配位芳香環が解離し金属-ケイ素結合にアルデヒドのC=O二重結合が挿入することで,Mo-C-O三員環錯体2が生成した。錯体2は熱的に不安定であり,溶液中,室温で一酸化炭素が分子間で移動し三員環のC-O結合に挿入する従来に無い反応を起こし,η3-オキサアリル錯体が生成することを見出した。この反応は,有機ケイ素化合物の新しい変換に応用できる可能性があるため,学術的意義が大きいと考えられる。一方,1とアリール置換基を持つアルデヒドとの反応では,η3-シロキシベンジル錯体3が得られ,アルデヒドの置換基の種類に依存して生成物(2および3)が異なることが分かった。 また,5 mol%の錯体1存在下,アルデヒドと第三級シランとを反応させるとC=O結合のヒドロシリル化が触媒的に進行し,アルコキシシランが主生成物として得られた。前述の化学量論反応の結果から,この触媒反応は,錯体2,3を中間体として経由して進行すると考えられる。 2 錯体1にアルケンRCH=CH2 (R = n-Bu, Ph)を反応させると,1の配位芳香環の解離を伴い金属-ケイ素結合にC=C二重結合が挿入し,ビニル基の末端炭素が選択的にシリル化された生成物が得られた。すなわち,1と1-ヘキセンとの反応ではC-Hアゴスチック相互作用を持つと考えられるアルキル錯体(各種スペクトルの測定結果に基づき分子構造を推定)が得られたのに対し,1とスチレンとの反応ではη3-ベンジル錯体が得られた。また,錯体1が1-ヘキセンのC=C結合の第三級シランによるヒドロシリル化に対して触媒活性を示すことを見出した。 上記1,2の研究により得られた知見は,金属/ケイ素錯体を触媒とした不飽和有機分子のヒドロシリル化の機構を考察する上で重要であると考えられる。
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