2011 Fiscal Year Research-status Report
低原子価ケイ素およびゲルマニウムを配位原子とする遷移金属錯体の研究
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23750054
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 孝仁 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90425413)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シリレン錯体 / ゲルミレン錯体 / ゲルミリン錯体 / メタロゲルミレン / タングステン / キレート配位子 / 転位反応 / 高周期元素 |
Research Abstract |
1.ジハロゲルミレンを用いたクロロメタロゲルミレンの合成研究 新奇な構造を持つ低原子価ゲルマニウムを配位原子とする遷移金属錯体の前駆体として、クロロメタロゲルミレンの合成を行った。N-ヘテロ環式カルベンが配位したジクロロゲルミレンとアニオン性タングステン錯体との脱塩反応により、ゲルマニウム上の置換基にクロロ基を持つメタロゲルミレンを合成することに成功した。X線結晶構造解析により、N-ヘテロ環式カルベンで安定化されたクロロメタロゲルミレンのW-Ge結合距離は既知のW-Ge結合の中で最も長いことがわかった。また、理論計算からこのクロロメタロゲルミレンのゲルマニウム中心はほとんど混成しておらず、ゲルマニウムの4s軌道は主に孤立電子対によって占有されていることがわかった。2.分子内塩基で安定化されたゲルミレン錯体およびゲルミリン錯体の合成研究 N,Oキレートを持つクロロゲルミレンを合成し、それをタングステンピリジン錯体と反応させることで、分子内塩基で安定化されたクロロゲルミレンタングステン錯体の合成を行った。さらに、この錯体からクロロ基を塩化物イオンとして引き抜くことで分子内塩基で安定化されたカチオン性ゲルミリン錯体の合成に成功した。また、分子内塩基で安定化されたクロロゲルミレン錯体において、加熱条件下でタングステン上のメチル配位子とゲルマニウム上のクロロ基が交換するという転位反応がジアステレオ選択的に起こることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年3月の東日本大震災により、研究室は壊滅的な被害を受けた。実験施設は一時使用停止になり、実験器具や分析機器などもほとんどが使用不可能となった。その後、仮設校舎の建設や分析機器の再購入など迅速な復旧活動が行なわれたものの、約8カ月間は実験研究をほとんど停止せざるおえない状況であった。そのため、当初の研究計画よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
震災後、ほとんど実験研究のできない状況が続いていたが、昨年11月に新設された仮設校舎に移設が完了し、実験器具や分析機器も揃いようやく本格的な実験研究が可能となった。そこで今年度は、前年度の遅れを取り戻し当初の研究目的を達成できるよう全力を尽くす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,震災から実験研究を復旧させるため物品費を多く消費したことにより0円となった.次年度の研究費は平成24年度請求額を計画している研究の遂行に使用する予定である.
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