2011 Fiscal Year Research-status Report
メカニカルな機構に基づく戦略的なヘリシティー反転が可能ならせん型錯体の開発
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23750055
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
秋根 茂久 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30323265)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | らせん型錯体 / 超分子化学 / らせん構造 / 分子機械 / 分子認識 / 多核錯体 / 亜鉛 / ランタニド |
Research Abstract |
らせん型分子は、ねじれた分子骨格に基づく特異な不斉環境を与えるユニットとして研究されてきた。らせん型錯体の不斉な環境やそれに基づく物性・機能は、ヘリシティーによって決定されるため、ヘリシティーを自在に逆転させられる系を構築すれば、不斉機能スイッチングを実現できることになる。本研究では、外部刺激応答部位の構造変化をメカニカルに(分子機械的に)らせん部分に伝達させて、「戦略的に」ヘリシティーを反転させられるシステムの開発を行うこととした。 ヘリシティー反転が可能な金属錯体として、二つのクラウンエーテル部位を導入した一重らせん型錯体を合成した。この錯体と相互作用可能なゲスト分子として、直鎖アルカンジアンモニウム塩を用いて、二つのクラウンエーテル部位間の距離を変化させることにより、ヘリシティーの反転を検討した。ゲスト非存在下では、らせん型錯体は右巻き・左巻きの比率は75:25であったが、1,4-ブタンジアンモニウム塩を添加したところ、右巻きの比率が増大した。一方、1,12-ドデカンジアンモニウム塩を添加したところ、左巻きを主成分とする混合物に変化した。このとき、鎖長の長いジアンモニウムと相互作用することによって、二つのクラウンエーテル部位同士の距離が遠い位置に固定され、それに連動してらせん型錯体部のヘリシティーが反転したことになる。すなわち、このらせん型錯体の系は、ゲスト分子の長さの違いを見分けて、長さの情報(長・短)をヘリシティーの情報(右巻き・左巻き)に変換できる初めてのシステムとなることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メカニカルな機構によるヘリシティー反転が可能なシステムの開発を目的として、クラウンエーテル部位を二つ導入した亜鉛・ランタン四核錯体を新たに合成し、ジアンモニウム認識を駆動力としたヘリシティー反転が設計通りに起こることを明らかにした。従って、研究はほぼ計画通り進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた知見を活かし、本年度は各種の外部刺激応答部位を導入したらせん型錯体を合成し、外部刺激応答型のヘリシティー反転についてさらに研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、試薬・ガラス器具等の物品費や成果発表の際の交通費等の支出を計画している。
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Research Products
(25 results)