2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23750057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村瀬 隆史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70508184)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 自己組織化 / クラスター / ナノワイヤー / 単分子伝導度 / 3核錯体 |
Research Abstract |
本研究は、自己組織化により形成される有機ピラー型かご状錯体の内部空間を多核錯体の集積場として活用することで、構成金属の数・位置が精密に制御された金属クラスターの合成を行う。多核錯体として平面状金属3核錯体(Au, Ag, Cu)を用い、金属を三角柱状に有限集積させたことにより発現する機能物性を解明する。特に、金属クラスターの単分子伝導度に焦点を当てる。平成23年度は、有機ピラー型かご状錯体の内部空間に、Au(I)3核錯体を1分子、2分子、3分子集積させたAuクラスター(Au3, Au6, Au9)を合成した。Auクラスターの単分子伝導度は、専門家と協力して測定を行った。具体的には、(i) 測定対象分子を含む水中でAu STM tipとAu結晶を機械的に接触、(ii) 金属接合破断後に分子を架橋させ、伝導度を測定した。平面状芳香族有機分子(ピレンジオン)を有限集積した有機ピラー型かご状錯体は、電子が積層したπ分子系を介して輸送されるため高い伝導性を示し、長距離電子輸送を可能にすることが既に分かっている(Angew. Chem. Int. Ed, 2011, vol. 50, p 5708-5711)。今回のAu(I)3核錯体を有限集積させた系の伝導度は、芳香族有機分子(ピレンジオン)を有限集積した系と比較してもさらに高い値を示した。また集積数の増加に対する伝導度の減少が小さくなり、長距離電子輸送能力が高くなった。このことは、金属が集積することにより、新たな伝導チャンネルが追加された可能性を示唆している。得られた成果は、日本化学会第92春季年会にて口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に予定していたAu(I)3核錯体を有限集積させた系の単分子伝導度測定を、平成23年度の期間で行えたので、研究が早く進展しているといえる。一方、平成23年度では、有機ピラー型かご状錯体の上下のパネルに3核錯体を導入して、(Au3)nがパネル上下を貫通したナノワイヤーを構築することも予定していた。トリアゾール配位子をもつAu(I)3核錯体を合成していろいろ検討したが、当初目的としていたナノワイヤーを合成することができなかった。したがって、現在までの達成度を総合すると、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、有機ピラー型かご状錯体の上下のパネルに3核錯体を導入して、(Au3)nがパネル上下を貫通したナノワイヤーを構築することに主眼を置く。ピラゾール架橋型Au(I)3核錯体を母骨格として、さらに3方向にピリジン環を導入した拡張型パネル配位子の合成を予定している。また、平面状金属3核錯体として、Au以外にAg, Cuタイプの錯体を集積させることも考えている。Au(I)3核錯体の有限集積体は、Ag(I)イオンをサンドイッチ状に取り込むことが既に分かっている。Ag(I)イオンが挿入されたAu(I)3核錯体の有限集積体についても単分子伝導度を測定する。そして、伝導度特性におけるAg(I)イオンの挿入の効果を見積もる。得られた結果を取りまとめ、国内外での学会発表、海外一流専門誌に論文発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Au(I)3核錯体の有限集積体に関する単分子伝導度の結果は、平成23年度末に出たばかりである。そのため、この成果を学会発表する機会が少なく、研究費を旅費として使用する頻度は少なかった。Au(I)3核錯体の合成に使用しているAuの試薬は、この1年で価格が高騰し、研究費における物品費の占める割合が、当初より大きくなると考えられる。本研究を遂行する上でAuの試薬は必要不可欠であり、物品費が不足する場合には旅費から補填する予定である。
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Research Products
(16 results)