2011 Fiscal Year Research-status Report
高キャリア移動度を有する配位高分子の合成と電界効果トランジスタへの応用
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23750066
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
大久保 貴志 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90322677)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 配位高分子 / キャリア移動度 / 電界効果トランジスタ |
Research Abstract |
本研究ではこれまでジチオカルバミン酸を配位子とした銅二価単核錯体とハロゲン化銅を有機溶媒中で反応させることで種々の混合原子価配位高分子が合成できる事を見いだしてきており、本研究課題では特に高キャリア移動特性を示す配位高分子の合成と電界効果トランジスタへの応用を目指し研究を行ってきた。これまで合成した化合物のうち最も高い伝導性を示す配位高分子CuBrBu2Dに関してマイクロ波空洞吸収法を利用して移動度を評価(FP-TRMC)したところ、12.8 cm2/Vsとアモルファスシリコンを上回る高いキャリア移動度を有する化合物であることが明らかとなった。また、新たに合成したCuBrPen2Dは銅三価を含む混合原子価配位高分子であった。すなわち、系中に含まれるジチオカルバミン酸銅二価単核ユニットCu(Pen2dtc)2の一部が部分酸化され、正孔が注入された状態である可能性が示唆された。しかしながら、FP-TRMCの結果、この配位高分子もアモルファスシリコンを上回る高キャリア移動度(3.3 cm2/Vs)を示すものの、キャリア密度はCuBrBu2Dより低く、部分酸化されたジチオカルバミン酸銅三価単核ユニットは伝導に関与していないことが明らかになった。また、電界効果トランジスタに関しては測定系のセットアップは終了し、代表的な高キャリア移動度を示す有機半導体材料であるペンタセンに関して、本研究室の装置を用いて測定可能であることは確認したものの、配位高分子を用いた電界効果トランジスタの作製までには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回、新たにアモルファスシリコンを上回る高いキャリア移動度を示す配位高分子CuBrPen2Dの合成に成功した。ただし、このキャリア移動度は本研究室で以前合成した最も高いキャリア移動度を示す配位高分子CuBrBu2Dには及ばなかった。また、他にも種々のジチオカルバミン酸誘導体を用いて高キャリア移動度を示す配位高分子の合成を試みているが実現していない。一方、トランジスタに関しては、単結晶を用いたトランジスタの作製と評価には至っていないものの、最終年度で配位高分子のトランジスタ特性を評価するための測定系のセットアップは終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
高キャリア移動度を有する配位高分子の開発の点では、次年度は特にジチオカルボン酸置換基を有する配位高分子の合成を行う予定である。ジチオカルボン酸置換基を有する配位子はジチオカルバミン酸よりも高いHOMOレベルを有しているため、高キャリア移動度の配位高分子を合成する上では有利であると考えている。現在、ベンゼンジチオカルボン酸を配位子とした単核錯体を合成し、それを原料として配位高分子の合成に取り組んでいる最中である。また、配位高分子を用いた電界効果トランジスタを作製し評価するための準備は既に完了したため、今後実際に本研究室で合成した高キャリア移動度を示す配位高分子を用いて、そのトランジスタ特性を評価する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費はかなりの部分を研究補助員雇用のための人件費として使用する予定である。当初は合成試薬やデバイス作製のための消耗品を購入し、研究を進めることを計画していたが、研究の進捗状況がおもわしくないため、合成およびデバイス作製が可能な研究補助員を雇用し、研究を推進する。残りの研究費は消耗品と研究発表のための旅費に使用する。
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