2012 Fiscal Year Annual Research Report
高キャリア移動度を有する配位高分子の合成と電界効果トランジスタへの応用
Project/Area Number |
23750066
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
大久保 貴志 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90322677)
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Keywords | 電界効果トランジスタ / 配位高分子 / キャリア移動度 / 強誘電性 |
Research Abstract |
本研究ではこれまでジチオカルバミン酸を配位子とした銅二価単核錯体とハロゲン化銅を有機溶媒中で反応させることで種々の混合原子価配位高分子が合成できる事を見いだしてきており、本研究課題では特に高キャリア移動特性を示す配位高分子の合成と電界効果トランジスタ(FET)への応用を目指し研究を行ってきた。これまで合成した化合物のうち最も高い伝導性を示す配位高分子CuBrBu2Dに関してマイクロ波空洞吸収法(FP-TRMC)によりキャリア移動度を評価したところ、12.8 cm2/Vsとアモルファスシリコンを上回る高い値を示した。更にこの配位高分子は強誘電性を示し、室温での誘電率は65000と極めて大きいことがわかっている。本研究では平成23年度に電界効果トランジスタのデバイス作製および評価のための環境を整え、平成24年度には実際に上記配位高分子の単結晶を用いて電界効果トランジスタ(FET)を作製し、そのデバイス特性を評価した。その結果、通常の有機FETに比べ、強誘電性配位高分子を用いたFETが極めて低電圧駆動することを見出した。すなわち、有機トランジスタにおいて標準試料として利用されるペンタセンを用いたFETに対して、強誘電性配位高分子を用いることで1桁以上低電圧でトランジスタが高出力駆動した。この出力特性からキャリア移動度μを見積もったところ、μ= 513 cm2/Vsと単結晶シリコンに匹敵する極めて高い値を示した。また、ゲート電圧の走引に対してヒステリシスが観測され、このトランジスタが配位高分子の強誘電性に起因するメモリ効果を発現することを見出した。しかしながら、この出力特性は極めて異常でドレイン電圧がゼロにも関わらずソース-ドレイン間に電流が流れている。現在これは強誘電体の緩和に伴う過渡電流であると考えているが、その詳細は明らかになっていない。
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