2012 Fiscal Year Research-status Report
酵素前駆体を分子認識素子として利用する電気化学バイオセンシング手法の開発
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23750073
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 久美 東北大学, マイクロシステム融合研究開発センター, 研究支援者 (20597249)
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Keywords | バイオセンサ / 電気化学 / 酵素前駆体 / チップ型電極 / 生体機能利用 |
Research Abstract |
平成24年度は,平成23年に確立したセンシング原理を利用したエンドトキシンの実用センサ開発および試薬改良のための検討を行った.さらに,エンドトキシン以外の対象物として,アポトーシスの検出が可能であることを確認し,本研究で開発している手法が,より一般的なバイオセンシング手法としての展開が可能であることを示した. 実用センサ開発について,スクリーンプリント電極を用いた安価なセンサチップによるエンドトキシン検出法の開発を行った.センサチップは6 mm×36mmの3層構造で,1層目が電極チップ,2層目が流路,3層目が流路の天井となる親水性フィルムである.参照電極もAg/AgClインクで作製してチップに組込み,問題なく動作することを確認した.23年度に開発した新規基質Boc-Leu-Gly-Arg-p-aminophenolと試作したスクリーンプリント電極を組み合わせて,アンペロメトリ法で実用濃度(10-1000 EU/L)のエンドトキシン検出に成功した.本研究成果をもとに企業と共同で量産化を見据えた計測システムの開発も進み,使い捨て電極チップと計測装置のプロトタイプが完成している. 酵素前駆体を用いる電気化学センシング手法の一般展開に関する研究について,カスパーゼ3活性を指標とした細胞アポトーシス検出を試みた.基質にAsp-Glu-Val-Asp-p-nitroaniline(DEVD-pNA)を用いて,カスパーゼ3の酵素反応によって遊離するpNAを電気化学的に検出し,ヒト肝がん由来細胞株のアポトーシスを検出できることを確認した.同様の手法は他のプロテアーゼ検出にも応用できる.プロテアーゼは細胞のシグナル伝達等の生命活動に広く係わっており,電気化学的手法を用いた新しいセンシング手法の確立は,移植細胞評価等の医療応用だけでなく,生命科学研究のためのツールとしても利用が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スクリーンプリント電極で実用的な濃度範囲のエンドトキシン検出に成功し,さらに昨年度開発した新規基質を用いて,当初計画していたディファレンシャルパルスボルタンメトリよりも簡易なプログラムや安い電子材料で正確な測定が可能なアンペロメトリによる計測を実現しており,実用化までに必要な基礎研究はほぼ完了した.さらに,当初の予定よりも1年以上早く,酵素前駆体を用いる電気化学センシング手法の一般展開に関する研究が進んでおり,全体的に当初の計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,実用システムの評価および実サンプルの測定評価を行う.プロトタイプの測定装置と電極チップを用いて,開発したシステムが実用的なセンサとして機能するかどうかの評価を行う.チップ形状や試薬添加法の改良を行い,エンドトキシンのコンタミネーションなく酵素反応をより効率的に進める方法を検討する.また,透析液や生体試料など夾雑物質がある系でも本手法が利用できることを確認する.夾雑物質が測定に影響する場合は,影響を低減する手法(例えば前処理を行ったりpH調整用の試薬を予め添加したりするなど)を検討する.さらに,昨年度成功した変換ストリッピング法と組み合わせた高感度化を図り,より高機能なセンサ開発を目指す.酵素前駆体や受容体を用いる電気化学センシング手法の一般展開に関する研究について,電気化学測定法の特長を活かしたアポトーシス検出の応用の検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額530,102円と当初予定の平成25年度請求額とあわせ,平成25年度の研究遂行に使用する予定である. 平成25年度は物品費に1,400,102円,旅費に50,000円,その他(通信費,研究成果投稿料,英文校正費用)に80,000円を予定している.実験設備はこれまでの研究で使用している東北大学の設備を利用するため,備品の購入行わない.物品費は,酵素前駆体試薬や基質などの生化学試薬,チップ型電極を作製するための小型部品や金属材料,微細加工に必要な試薬,生化学実験に必要なスライドガラスや遠沈管などのガラス,プラスチック器具などの消耗品を購入するために使用する.また,学会等で研究成果を公表するための旅費および論文投稿をおこなうためにそれぞれ旅費,その他の費用を使用する.
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Research Products
(4 results)