2011 Fiscal Year Research-status Report
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23750083
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 宏和 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80462696)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | メチル化塩基 / 分析方法 / 抗体 |
Research Abstract |
汎用性と簡便性に重点を置いた被メチル化塩基配列の新規分析法の確立を目的とし,免疫学的な被メチル化塩基配列分析法を設計した.本手法では,メチル化塩基に対する抗体を用いてメチル化DNAを特異的に抽出し,その周辺の塩基配列を解析することで被メチル化塩基配列を決定する.平成23年度は,計画通り市販されている抗5-methylcytosine抗体を用いて,大腸菌染色体DNA中におけるDcmメチル化サイトの分析を行った.解析されたDNAフラグメント全てにDcmサイトが含まれ,本手法の有効性が示唆された.しかしながら,Dcmサイトを2ヶ所以上含むフラグメントが有意に検出され,Dcmサイトが1ヶ所の短いフラグメントは検出されなかった.メチル化塩基が1ヶ所の場合,結合する抗体が1分子に限られるのに対し,2ヶ所以上の場合は複数の抗体が複数のDNAフラグメントと共凝集するため,沈降しやすくなるためと考えられる. 平成23年度の計画として,抗N6-methyladenine抗体と抗N4-methylcytosine抗体の作製を計画していたが,幸運なことに平成23年度から抗N6-methyladenine抗体は市販されるようになった.5-MethylcytosineとN6-methyladenineと比較するとN4-methylcytosineの出現頻度は極めて低く,その重要性が低いことから,抗N4-methylcytosine抗体の作製を保留し,N6-methyladenine抗体を用いた大腸菌染色体DNA中におけるHsdメチル化サイトの分析を行った.Hsdメチル化サイトについては,今のところ検出できていない.この理由としては,メチル化頻度が低すぎるため複数のメチル化サイトをもつフラグメントが少ない点が挙げられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から計画されていた抗5-methylcytosine抗体を用いた検証実験に加え,N6-methyladenine抗体を利用した検証実験を先倒しに行えた点は,当初の計画以上と評価できる.さらに,本手法によるメチル化サイト分析には,フラグメント中のメチル化サイトが複数必要であることを明らかにし,その確立へ向けた足がかりを構築できた.ただし,このような重要な前進があったものの,平成23年度内に手法を確立する当初計画は達成できなかった.この点に関しては計画以下と評価している.以上を踏まえ,おおむね順調に進展していると自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
手法の確立を目指す.重要性の低い抗N4-methylcytosine抗体の作製は引き続き保留とし,抗5-methylcytosine抗体ならびに抗N6-methyladenine抗体を用いた検証実験を行っていく.フラグメント中のメチル化サイトが複数必要であったことから,リンカー部分にメチル化塩基を導入しておき,全フラグメントに最低1ヶ所はメチル化塩基が入るよう工夫する.これにより,メチル化サイトを1箇所しか含まない短いフラグメントでも効率よく免疫沈降すると期待できる.また,平成23年度の実施実験では,染色体DNAをより短く切断するよう設計してきたが,効率のよい免疫沈降にはある程度のフラグメント長が必要とも考えられるため,切断断片長の検討も併せて執り行なう.なお検証実験は引き続き,抗5-methylcytosine抗体を用いたDcmメチル化サイトおよび抗N6-methyladenine抗体を用いたHsdメチル化サイトを対象とする.特にHsdメチル化サイトの分析手法は先進性が高いことから,本手法の有効性が実証された後は,異種Hsdメチル化酵素遺伝子によるメチル化サイトの解析も行い,本手法の実用性について検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画ではHPLCの購入を計上していたが,異動に伴いその必要性がなくなった.さらに抗N6-methyladenine抗体の作製も不要となったことから,1100千円ほどを平成24年度に繰り越せる状況となった.平成24年度では,請求額500千円と繰越金1100千円の計1600千円を以下の経費に充てる計画である:抗体購入費,200千円;その他消耗品,800千円;旅費,100千円;その他(校閲,出版費,DNAシークエンス),500千円.
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