2012 Fiscal Year Annual Research Report
高分子の側鎖配向による構造キラリティーの発現・制御と刺激増幅型キラル識別への展開
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23750086
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
春藤 淳臣 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40585915)
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Keywords | 表面・界面 / キラリティー / 濡れ性 / 薄膜 |
Research Abstract |
本研究課題では、生体内のDNAやタンパク質にしばしばみられる構造キラリティーを発展的に利用するため、高分子の側鎖配向に伴うキラリティーの誘起・増幅・制御を可能とする直鎖状高分子を合成し、それに基づく革新的なキラル識別剤を開発することを目的としている。平成24年度に実施した具体的な項目と主な研究成果を以下にまとめる。(1)二次キラル高分子の膜表面における分子鎖凝集状態および局所コンフォメーションの解析:前年度までに、ビフェニル基とキラルアルキル基を側鎖に併せもつ二次キラル高分子を合成し、側鎖配向によるキラリティーの誘起・増幅を明らかにした。また、接触角測定に基づき同高分子膜のキラル特異的な表面特性を明らかにした。本年度は、この現象の理解と一般化を目指し、膜界面における高分子の凝集状態および局所コンフォメーションを、それぞれ原子間力顕微鏡観察および和周波発生分光測定に基づき評価した。その結果、キラル液体によって誘起される高分子膜表面の構造再編成を明らかにした。(2)蛍光キラル検出フィルムへの応用:ナフタレンジイミドを導入した二次キラル高分子を新たに設計・合成した。同高分子は、溶媒キャスト法やスピンコート法によって簡便に製膜できること、また、得られた膜は自己支持性があることを確認した。キラル液体をプローブとした接触角測定によって、膜表面のキラル特異的な濡れ性を明らかにした。興味深いことに、プローブ液体のキラリティーに依存した蛍光発光を確認した。また、蛍光偏光解消測定に基づき、膜表面の高分子の運動性がキラリティーに依存して変化することを明らかにした。これらの結果は、液体のキラル情報を運動性変化に基づき蛍光発光に変換できることを示しており、新たな原理に基づく蛍光キラル検出フィルムの応用が期待できる。
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