2011 Fiscal Year Research-status Report
高速液体クロマトグラフィーのためのキャリブレーションフリーな検出法の開発
Project/Area Number |
23750089
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大平 慎一 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (60547826)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 高速液体クロマトグラフィー / キャリブレーションフリー / 電荷量検出器 |
Research Abstract |
本研究では,高速液体クロマトグラフィーのためのキャリブレーションフリー検出法を検討している。分離カラムから溶出してきた有機物を酸化してすべてを二酸化炭素に変換して気化分離し,再度捕集して検出することで測定対象物質の炭素数に応じた応答を得る。今年度は,一連のプロセスの各部の最適化を実施した。まず,長いプロセスを要するため,ピークがブロードになることが懸念されるが溶離液をインラインで電解して生じた酸素ガスによってセグメント化することに成功した。セグメント化によりピークの半値幅はおよそ半分となった。次に酸化プロセスについて検討したが,紫外線ランプのみによる酸化ではカルボン酸の酸化効率は,70~90%であった。今後,フェントン反応による酸化手法を検討していく。溶離液中に生じた炭酸を二酸化炭素として気化分離する気化部では,10種類の気化分離器を試作評価し,現在2つまで候補を絞っている。今後,長期安定性の観点から最終決定する。捕集部については以前,大気成分の捕集に使用したアニュラースクラバーや平面型スクラバーを比較検討した。捕集後の炭酸イオンを検出する方法として,電荷量検出器を検討した。電荷量検出器では,チャネルのサイズや印加電圧の最適化を行った結果,10 nMの検出限界が得られた。この電荷量検出器では,従来イオン成分の検出に広く用いられた溶液導電率法と異なり,酸性溶液中に含まれる解離していない炭酸イオンも検出できることから大幅な感度の向上を図ることができた。以上のように一連の検出プロセスの各部分について最適化を行った後,フローインジェクション法により直鎖カルボン酸の測定を試みた。その結果,炭素数1から3の直鎖カルボン酸のピーク面積の比は,1:1.8:2.4であり,おおよそ目的に近いが,酸化部を紫外線法からケミカルな手法とすることで,理論値どおりの面積比が得られるよう検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,酸化部,気化捕集部,検出部の最適化を目的としていた。酸化部については,まず前段階である水の電解により生じた酸素によるセグメントの形成に成功した。有機化合物の酸化については,当初予定していた紫外線酸化では不十分であるため,今後,フェントン反応を利用した有機物から二酸化炭素への酸化変換を検討していく。その際には,過酸化水素を添加する方法のみならず,電解で過酸化水素をin-situで生成する方法も検討する。気化捕集部については,10種類の気化部を比較検討すると同時に,大気成分の捕集に用いてきたガス拡散スクラバーの形状について最適化した。あわせて,捕集溶液として用いるアルカリの種類および濃度を最適化した。二酸化炭素を溶液中に捕集して生じた炭酸イオンの検出のために,電荷量検出器を開発した。今回開発した電荷量検出器は,溶液チャネルの構造,膜の種類,印加電圧などを検討することで,当初想定した検出限界より100倍高い感度を得ることができた。本法のかなめである検出部の高感度はシステムの特性を大きく向上するものである。現時点では酸化部に課題を残すが,他の部分については完成しており酸化部の特性向上をはかった上で高速液体クロマトグラフィーのシステムに組み込んだ形での評価をすすめていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,前年度の課題であった酸化効率の向上を目指す。具体的には,廃水処理や牛乳試料測定のための前処理に用いられるフェントン反応による酸化で定量的な酸化上演を確立する。次に構築したフローによる検出システムを有機脂肪酸,糖およびアミノ酸により評価する。有機脂肪酸については、炭素数1から6程度までの直鎖脂肪酸をターゲットとする。糖類は単糖類,二糖類を,また、アミノ酸については、一般的なアミノ酸20種について測定条件を確立する。その際、アミノ酸に含まれる硫黄や窒素の妨害除去の手法について検討する。除去については気相中で硫黄酸化物をヨウ素充填カラムによる吸着除去、窒素酸化物については還元触媒により一酸化窒素に変換することで溶液への取り込みを抑制する。このようにして確立した条件により,分離カラムから溶出してきた有機物のインライン検出システムを構築し評価する。本システムでは安定した有機化合物を1つ,標準として用いて定量する。同じ試料を従来の検出法で,すべての測定対象について標準溶液による検量線を作成して得られる結果と本法の結果を比較評価する。有機酸や糖類,アミノ酸の検出系を確立した段階で、それぞれについて,学会での発表、学術論文を執筆・投稿し、広く当研究成果を公開していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は,主に分離カラムの購入,測定結果の比較に用いる従来から用いられている検出器の消耗品,膜材料,電気部品,試薬の購入に充てる。分離カラムは,溶離液中に有機溶媒の添加を必要としないものを厳選する。カルボン酸やアミノ酸の検出には蛍光法を用いるが,反応試薬やキセノンランプなどの消耗品を購入する。また,電荷量検出器,ガス捕集部に用いる膜材料を購入する。
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