2011 Fiscal Year Research-status Report
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23750098
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 信也 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 産学官連携研究員 (80570142)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ナノポーラス金属 / 固体金属触媒 / パラジウム / カップリング反応 / 金属ガラス / 合金 |
Research Abstract |
遷移金属触媒を用いるカップリング反応は,機能性素子,電子材料,医薬品中間体などあらゆる機能性分子を合成する場面で活用される現代有機合成化学において中心的役割を果たしている.従来カップリング反応は均一系で行われてきたが,近年はグリーンケミストリーの観点から固体触媒を用いる反応系の開発が盛んに行われている.これまでに多くの触媒が開発されてきたが,その形態はもっぱら微粒子状の触媒である.一方,本研究課題ではバルク金属をナノ多孔質化したスケルトン状の金属であるナノポーラス金属に着目した.本年度はナノポーラスPd(PdNPore)のカップリング反応に対する触媒特性について研究を行った. その結果,2 mol%のPdNPore存在下で種々のヨウ化アリールおよび臭化アリールの鈴木カップリングおよびHeck反応が良好な収率で進行することを見出した.特に,本触媒は形状がモノリス状であるため凝集不活性化の懸念がなく,通常の微粒子触媒では不可欠な担体,配位子,安定化剤はいずれも添加しなくとも問題なく使用できる.また,触媒形状が金属片であることから濾過や遠心分離などは必要なく極めて簡便に回収でき,少なくとも3回再利用できることを確認した.さらに,4-ブロモアセトフェノンとスチレンのHeck反応において反応後のPd溶出量をICP-MSで測定したところ,PdNPoreのPd溶出量は0.57 ug (1.14 ppm)であった.この値は市販の固体Pd触媒であるPd blackやPd/Cを用いた場合と比較しても最も少ないことから,PdNPoreは耐久性に優れた触媒であることを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき各種カップリングに対して条件検討を行った結果,PdNPoreが幅広く適用可能であることを見出した.また,種々の母合金を脱合金化することで様々なPdNPoreを作製し,これらの触媒特性についても検討した.その結果,例えば,PdNiP系から調製したPdNPoreとPdAl系から調製したものを比較した場合,PdNiP系のものは反応性が高く,PdAl系のものは溶出量が低いことが分かった.さらにAuPdAl合金からバイメタリックなナノポーラス金属AuPdNPoreを作製し,同様に鈴木カップリング,Heck反応について検討したが,Pdの溶出をくい止めることはできなかった.しかし,カップリング以外の反応としてAuPdNPoreを触媒とするベンズアニュレーションを検討したところ,金属活性種の溶出を伴わずに反応が進行することを見出した.このように母合金の種類,反応の種類,反応性,溶出量の関係が見いだせたことから,本研究計画は概ね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
カップリング反応はPd種の酸化的付加-還元的脱離機構を経ており,溶出を引き起こす原因となる有機Pd種の発生が宿命的である.また,溶出したPd種は系中のイオンなどにより安定化され更なる反応の触媒活性種となることが不可避である.従って,非担持型の本触媒をカップリング反応に用いる場合,真の不均一系反応は極めて達成困難であるとの結論に至った. 一方,工業的価値の高い酸化反応や還元反応などは既に固相上で反応が進行することが多数報告されており,ナノポーラスを用いた系についても真の不均一系反応が期待できる.実際当研究室では,ナノポーラスAu(AuNPore)を非担持型触媒とする効率的な2級アルコールの酸素酸化反応を達成しており,そのなかでAuは溶出しないことを確認している.23年度の研究結果および酸化反応で得た知見を踏まえて,現在は酸化的アミド化反応へとエフォートをシフトしており,本年度はナノポーラス金属を用いる酸化還元反応や付加反応の開発を進める方針である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では合金の調製と多数の反応検討が中心となることから,触媒原料となる純金属,および反応とその生成物解析に伴う試薬や溶媒など消耗品の購入を予定している.また,触媒そのものや反応における溶出種の分析については現有機器では対応できず,外部依頼する必要があるため,分析依頼料にも使用する予定である.
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Research Products
(10 results)