2011 Fiscal Year Research-status Report
連続的マイクロフロー反応の開発及び多段プロセスへの展開
Project/Area Number |
23750099
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 雅晴 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80361509)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 合成化学 / 触媒・化学プロセス / マイクロ・ナノデバイス / 連続プロセス |
Research Abstract |
本研究課題は、金属触媒や配位子を表面に担持した高機能微小空間内において、水を溶媒として用いることにより、高効率かつ有機溶媒フリーの環境調和型連続生産反応の開発を行なうことを目的とし、引き続き得られた化合物に対し求核剤を作用させ、炭素-炭素結合生成反応を行なうことで、環境型マイクロフロー多段階反応を連続流の中で実現させることを目指す。平成23年度は新たな炭素-炭素結合生成反応の開発及びマイクロフローに適した新たな配位子の設計及び合成を行った。 近年、演者は酸化銀(I)を触媒とした水系溶媒中でのアリルスズ試薬によるアルデヒドのアリル化反応を報告した。しかしながら、環境に優しい反応の開発において、スズ試薬の使用はできれば避けられることが望ましく、また共溶媒として有機溶媒を用いない水中での反応も望まれる。そこで、アリルケイ素試薬による水中でのアルデヒドのアリル化反応の検討を行ったところ、酸化銀(I)触媒によるアルデヒドのアリル化反応を完全水中で行うことに成功した。本反応は、わずか0.02 mol%の酸化銀(I)触媒存在下でも円滑に進行すること、また、ケイ素から銀へのトランスメタル化を経由して進行したものと推測されるα-付加が観察された。本反応は、水の存在しない条件では反応が著しく抑制されることから反応系中において水が重要な役割を果たしていること、また、触媒の水溶液では進行しないことから、固体表面で進行しているものと推察される。 一方、筆者らは近年水酸化亜鉛を中心金属源とするアルデヒドとのアリル化反応、及びスカンジウムトリフラートを中心金属源とするα,β-不飽和ケトンに対する水中でのチオールの付加反応においてキラルビピリジン配位子が有効な不斉配位子であることを見いだした。これらの反応をキャピラリーに担持し、マイクロフローに適用すべく、キャピラリー担持型配位子の設計及び合成を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した、(1) 水系溶媒を用いたマイクロフローリアクターでの炭素-炭素結合生成反応の開発。及び(2) マイクロフローリアクターに適用可能な固定化法の検討とも検討はほぼ順調に行われている。特に酸化銀(I)を用いたアリル化反応の検討では、有機溶媒フリーの反応を開発することが出来、目的とする環境調和型反応の実現に大きく近づいている。また、マイクロ空間へ触媒担持を行うと、担持した触媒の絶対量が非常に少ないために反応の評価が困難であるといった問題がしばしばあるが、本触媒系はわずか0.02mol%でも反応が円滑に進行することを見いだしており、マイクロフローでの反応開発に支障が無いものと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に引き続き、各反応の開発及び評価を行なうと共に、連続的多段合成への展開がはかれないかの検討を行う。具体的には(1) 酸化銀(I)触媒のキャピラリー固定化の検討、及び水中でのアルデヒドに対するアリル化反応による反応の評価。及び(2) 不斉配位子のキャピラリー固定化の検討を行う。最終的にはアルコールからのアルデヒドへの酸化反応、引き続くアリル化反応等の連続プロセスを実証することで本課題を総括する。その際、グリオキシレートの様な常温・常圧下で長期間保存できないアルデヒドを逐次調整し、反応に供与する様なマイクロ連続合成の合成を活かした反応に展開する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
スターラー、エバポレーター、真空乾燥機、真空ポンプ等の汎用的な備品は申請者の所属する研究室の備品を用いる事とする。備品使用の件は研究室に了解を得ている。申請可能な残り予算を全て消耗品購入に充てる事を計画している。また、NMR、GC-Mass、HPLC等の設備に関しても研究室の設備を使用する事とするが、NMRで使用する重溶媒は高価な上消耗品であるため、研究に着手する際には予め別途予算計上する必要がある。
|
Research Products
(11 results)