2011 Fiscal Year Research-status Report
多段階連続マイクロフロー合成装置による活性型ビタミンD3類の高効率合成法の確立
Project/Area Number |
23750101
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
布施 新一郎 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (00505844)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ビタミンD3 / 光反応 / 熱反応 / マイクロフロー反応 / マイクロフローリアクター |
Research Abstract |
平成23年度は、次の二つの事項について研究を実施した。1)本課題研究で目的とする活性型ビタミンD3のマイクロフロー合成において、その原料となる活性型プロビタミンD3のスケールアップ合成法の確立と、スケールアップ合成の実施。2)供給した活性型プロビタミンD3を原料とする、マイクロフローリアクター中での光・熱連続反応による活性型プロビタミンD3合成の検討。 研究事項1)前年度までの予備検討により、既に小スケールで活性型プロビタミンD3を合成する手法を確立した。そこで、本手法を基盤としてスケールアップ合成法を検討した。ここで鍵となったのはグリニャール反応であった。本反応は小スケールで行った際には再現性良く、良好な収率で目的物を与えたものの、スケールアップ時には収率が安定しなかった。反応条件を精査したところ、温度を厳密に制御しつつ反応を行うことによって問題を解決できることがわかり、スケールアップ合成法の確立に成功した。また、本合成法により活性型プロビタミンD3のスケールアップ合成を実施し、十分量を供給することに成功した。 研究事項2)供給した活性型プロビタミンD3を原料として、マイクロフローリアクター中での連続的な光・熱反応による活性型ビタミンD3のマイクロフロー合成を検討した。すなわち、我々が独自に開発したビタミンD3のマイクロフロー合成法を元に、光マイクロフローリアクターと光・熱マイクロフローリアクターを連結し、活性型プロビタミンD3のジオキサン溶液を導入した。反応液のNMR、LC解析の結果、目的物の生成を確認した。本結果は、我々が独自に開発したビタミンD3類のマイクロフロー合成法が官能基化されたビタミンD3類縁体の合成にも適用できることを示唆するものである。官能基化されたビタミンD3類は医薬品候補化合物として重要であることから、極めて意義の大きい結果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、平成23年度は1)活性型ビタミンD3のマイクロフロー合成において原料となる活性型プロビタミンD3のスケールアップ合成法の確立と、スケールアップ合成の実施、2)供給した活性型プロビタミンD3を原料とする活性型プロビタミンD3のマイクロフロー合成の検討を目的として研究を推進し、研究事項1)2)のいずれについてもその目的を達成することができた。 平成24年度には、活性型プロビタミンD3類縁体のマイクロフローリアクター中での光・熱連続反応によるマイクロフロー合成を検討する計画である。具体的な合成標的としては、生理活性天然物であるカルシフェロール、カルデロール、アルファカルシドールを選択することとした。この検討を行うためには、十分量の活性型プロビタミンD3類縁体を供給する必要がある。そこで平成23年度中に、活性型プロビタミンD3類縁体の合成経路確立を目指して検討を行った。その結果、活性型プロビタミンD3を合成する際に用いたグリニャール反応を鍵とする合成手法が他の活性型プロビタミンD3類縁体の合成にも有効であることを明らかにした。さらには、確立した合成手法を駆使して、スケールアップ合成を実施した。現在、既に十分量の活性型プロビタミンD3類縁体を所持しており、活性型ビタミンD3類縁体のマイクロフロー合成の検討にも着手している。 以上述べたとおり、当初計画していた活性型プロビタミンD3のスケールアップ合成と、これを用いる活性型ビタミンD3のマイクロフロー合成の検討のみならず、平成24年度の研究計画を念頭に置いた、活性型プロビタミンD3類縁体合成法の確立と、スケールアップ合成の実施を完了しており、予定を上回るペースで研究は進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、活性型プロビタミンD3類縁体のマイクロフローリアクター中での光・熱連続反応によるマイクロフロー合成を本格的に検討する。当初の計画では、活性型ビタミンD3に存在する3つの水酸基は固定し、D環上側鎖の構造を変換した類縁体を合成する予定であった。しかしながら、平成23年度の研究において、活性型ビタミンD3に存在する水酸基の数が、化合物の有機溶媒に対する溶解性に大きな影響を与え、さらには、この溶解性の差がマイクロフロー合成の収率そのものにも大きな影響を与えることが判明した。本課題研究の目的は、我々が独自に開発したビタミンD3のマイクロフロー合成法の適用限界を精査することにあるため、当初の予定を変更し、活性型ビタミンD3の構造から一つの水酸基をなくした化合物であるカルデロール、アルファカルシドール、および二つの水酸基をなくした化合物であるカルシフェロールをそれぞれ標的化合物として設定し、活性型ビタミンD3中の水酸基の数(および位置)がマイクロフロー反応の成績に与える影響を調べることとした。 上述の通り、既にこれらの検討に必要な十分量の活性型プロビタミンD3類縁体を所持しており、マイクロフロー反応の検討も開始している。今後、本格的な反応条件検討を行う。すなわち、平成23年度に使用したマイクロフロー反応システム、反応条件を基盤として、流速、反応溶媒、光源とマイクロフローリアクターの距離といった各要素を検討する。反応成績についてはこれまで同様、HPLCにより目的物を精製して単離収率を求めることとする。また、さらには、平成23年度に目的物が得られることを確認した活性型ビタミンD3のマイクロフロー合成についても、さらなる検討を行い、反応条件の最適化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は直接経費として合計100万円の支出を計画している。本年度はまず、カルシフェロール、カルデロール、アルファカルシドールといった活性型ビタミンD3類縁体類の単離・精製方法を検討する。各化合物の単離・精製の検討にはHPLCを用いることとし、様々な分離条件を精査する必要がある。また、上述の通り、流速、溶媒、光源とリアクターの距離等様々な要素を変えてマイクロフロー反応条件を多数検討する予定である。このように反応自体に必要な有機溶媒、単離・精製に必要な有機溶媒等全てを合わせて、一年間で30万円ほどの支出を見込んでいる。また、HPLCによる単離・精製検討において、流出溶媒の検討だけでは、目的物を十分に分離できない恐れもある。この際には、分取用HPLCカラム自体の購入も必要になると考えている。これには、50万円ほどの支出を見込んでいる(25万円のカラムを2本購入することを想定している)。また、マイクロフローリアクターを用いた光反応、多段階反応の検討に関して最新情報の収集を行い、あわせて学会発表等による研究成果の発信を行うため、旅費として一年間で10万円程度の支出を予定している(国内出張にかかる経費5万円とし、二回の国内出張を想定している)。当研究室は一般的な有機合成に必要なガラス器具、精製に用いるHPLC装置や、NMRスペクトル、IRスペクトル、UVスペクトル、旋光度計、LCMSといった各種分析装置を備えているため、上述の支出で目的の研究は十分遂行可能であると考えている。
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Research Products
(3 results)