2012 Fiscal Year Research-status Report
ベースメタル「鉄」を用いる多官能性化合物の効率的合成法の開発
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23750102
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
秦 猛志 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (40419271)
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Keywords | 鉄触媒 / ユビキタス元素 / 低原子価鉄試薬 / グリニャール試薬 / 官能基共存型反応 / 官能性エンイン / スルホニルジエン / ペルオキシアセタール |
Research Abstract |
申請者は,鉄触媒を利用する多官能性鎖状化合物の合成法を見出し,既に報告している(Angew. Chem. Int. Ed. (2008年),Organic Letters (2010年)).そこで,平成24年度は,上述の反応の更なる適用性の拡大を狙い,官能性エンインやスルホニルジエンを用いて種々の多官能性鎖状化合物合成をおこなった.具体的には,触媒量のFeCl2存在下で,tert-ブチル(E)-2-ウンデセ-4-イノエートまたは(1E,3E)-1,3-ペンタジエニルフェニルスルホンにフェニルグリニャール試薬を作用させると,選択的に付加反応が進行し,tert-ブチル5-フェニル-3,4-ウンデカジエノエートまたは(Z)-4-フェニル-2-ペンテニルフェニルスルホンを単一の異性体として得ることができた.なお,官能性エンインに関する研究成果は,Advanced Synthesis & Catalystに報告することができ、またスルホニルジエンに関する研究は,現在リバイス中である.一方,申請者は,上記の研究途上において,触媒量のFe(acac)3存在下でt-BuO2Hをベンジルブチルエーテルに作用させると,ベンジル位のC-H結合が活性化され、酸化剤自身が基質に取り込まれたブチル(tert-ブチルペルオキシ)(フェニル)メチルエーテルを得ることができた.この反応は、ベンジルエーテルのみならず,アリルエーテル、プロパルギルエーテル、およびアセタールも適用可能であり,対応するペルおきアセタールをそれぞれ簡便に得ることができ,新たな官能性鎖状化合物合成法を見出すことができた.なお,この鉄触媒によるC-H結合活性化の研究成果は,Advanced Synthesis & Catalystに報告することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究として申請した,鉄触媒による官能性鎖状化合物合成に関しては,予備的知見を生かして官能性鎖状化合物合成に関する基礎的検討を実施し,効率的に研究を推進することができた.得られた成果としては,鉄塩触媒存在下で,官能性エンインやスルホニルジエンとグリニャールの試薬との選択的カップリング反応により,官能性鎖状化合物を効率的に合成できた.更に,この研究途上において,触媒量のFe(acac)3存在下でt-BuO2Hをベンジルブチルエーテルに作用させると,ベンジル位のC-H結合が活性化され、酸化剤自身が基質に取り込まれたペルオキシアセタールを得ることができ,これまでにない官能性鎖状化合物合成の知見も見い出せた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,本研究の更なる飛躍を目指して,鉄試薬(もしくは鉄触媒)を用いた官能性環状及び鎖状化合物の合成およびその応用利用を検討する.既に申請者は鉄塩触媒存在下でγ,δ-エポキシ-α,β-不飽和カルボニル化合物,光学活性アリルスルホネートにグリニャール試薬を作用させることにより,位置および立体選択的に多官能性鎖状化合物が合成できることを見出している.更に,鉄触媒を用いるγ,δ-エポキシ-α,β-不飽和カルボニル化合物の位置および立体選択的二量化反応による立体選択的シクロプロパン合成も見出している(論文未発表,研究計画時には別の構造を記載していた).これらの初期的知見および平成23および24年度の鉄試薬(もしくは鉄触媒)の安定性,反応性の知見を利用し,効率的に研究を推進させる.具体的な実施事項としては,光学活性アセチレンおよびアレンの合成,更にアジリジンの位置および立体選択的二量化反応へ展開をおこなう.また,これまで開発した鉄触媒反応を利用して,天然有機化合物や薬剤等の有用化合物合成をおこなう.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)