2011 Fiscal Year Research-status Report
アルケンへの逆マルコフニコフ求核攻撃を鍵段階とするヘテロ官能基新導入法の開発
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23750112
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
浦 康之 奈良女子大学, 理学部, 准教授 (40335196)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 合成化学 / 有機化学 / 有機工業化学 / パラジウム錯体触媒 / 末端アルケン / 逆マルコフニコフ求核攻撃 / 末端アセタール / アリールアセトアルデヒド |
Research Abstract |
二価のパラジウム錯体触媒とp-ベンゾキノン存在下において、種々の末端アルケン(ビニルアレーン類、アリルエーテル類、1,5-ジエン類)と嵩高いジオールであるピナコールを用いることによって、逆マルコフニコフ求核攻撃を経由する末端アセタール合成法を見出し、学術論文(Chem. Commun.,2012,48,1165-1167)として報告した。本反応ではピナコールの立体的要因が配位アルケンへの求核攻撃時の位置選択性を効果的に制御しており、これより嵩の低いジオールでは末端アセタールと内部アセタールが約1:1の生成比となり選択性が顕著に低下する。本研究は末端アルケンからの信頼性の高い直接的な末端アセタール合成法として重要であるとともに、求核剤の立体的要因によって位置選択性を制御できることを明瞭に示した点が学術的に意義深い。また、二価のパラジウム錯体触媒、p-ベンゾキノン類および少量の水存在下、三級アルコールを溶媒兼求核剤、ビニルアレーン類を基質としてそれぞれ用いることにより、この場合にも配位アルケンへの逆マルコフニコフ求核攻撃を経由して、アリールアセトアルデヒド類が良好な収率で得られることを見出した。本反応は穏和な条件下で迅速に進行し(40℃,1時間)、高位置選択的に目的物が生成する。ビニルアレーン類からの効率的なアリールアセトアルデヒド類の直接的合成例は極めて少なく、従って本方法は特に合成化学的観点から意義深いと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、遷移金属錯体触媒を用い、末端アルケンおよびヘテロ求核剤を基質としたヘテロ環骨格構築反応とアルデヒド合成反応という二種類の触媒反応の開発を目指している。ヘテロ環骨格構築反応については、パラジウム錯体触媒を用いた末端アルケン(ビニルアレーン類、アリルエーテル類、1,5-ジエン類)からの逆マルコフニコフ求核攻撃を経由する信頼性の高い末端アセタール合成法を学術論文として既に報告して一定の成果を得ており、また求核剤の立体的要因が配位アルケンへの求核攻撃時の位置選択性に顕著な影響を与えることを明瞭に示せたことも大きな意義がある。アルデヒド合成反応についても、現時点において、ビニルアレーン類を基質に用いることによって良好に反応が進行するパラジウム触媒系および反応条件を既に見出している。反応途中に生成する有機物中間体や、競合する過剰酸化反応やその他の副反応による副生成物などについても知見が得られており、これらの知見を基に今後のさらなる詳細な検討によって、当初の目標に掲げていた、より基質適用範囲の広い、高効率な触媒反応を実現できるものと期待される。以上より、現段階においていずれの反応開発も順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘテロ環骨格構築反応に関しては、末端アセタール合成反応におけるさらなる基質(末端アルケン)適用範囲の拡大、触媒活性のさらなる向上、またジオール以外の種々の嵩高い求核剤、特に窒素-窒素および窒素-酸素求核剤の適用可能性について検討する。1,1-付加型のみならず1,2-付加型の反応による含ヘテロ環化合物合成の可能性も調べる。また、これらの不斉合成反応への展開も試みる。アルデヒド合成反応に関しては、過剰酸化反応や、アリールアセトアルデヒドの高い反応性に起因する複数の副反応が競合することが問題点として挙げられ、これらの反応の抑制方法を検討してより高選択的・高効率的な触媒反応を目指す。また酸化剤としてベンゾキノン類に代えて酸素を用いることができれば、より環境負荷の低い合成法として実用性が飛躍的に高まることから、その方向でも検討を行う。また、基質としてビニルアレーン類以外の末端アルケン、特に、活性化されておらず配向基を持たないアルケンに対しても適用できるよう、触媒系および反応条件のさらなる詳細な検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたことについて、当初はグローブボックス装置の購入を予定していたが東日本大震災の影響により予定配分額の7割のみが一旦交付され、残り3割については交付されるかどうかが夏頃まで判明しなかったため、当初予定を変更してグローブボックスに代えて別の物品購入に研究費を充当したことによる。平成23年度の未使用額については主に高速液体クロマトグラフィー装置一式の購入費用に充て、触媒反応の分析に利用する予定である。次年度の研究費の使用計画について、その大部分は物品費として使用する予定であり、ガラス器具、その他の実験器具、試薬、溶媒、金属錯体等を購入予定である。また、国内旅費、論文英文校正謝金としても使用する。
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Research Products
(21 results)