2011 Fiscal Year Research-status Report
電気化学的に発生させた活性有機金属種を用いる新規カップリング反応の開発
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23750113
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
光藤 耕一 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (40379714)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | カップリング反応 / ホモカップリング反応 / クロスカップリング反応 / ビアリール / ジイン |
Research Abstract |
本研究の目的は電気化学的に発生させた活性種を触媒・反応剤に用いた新規カップリング反応の開発である。本年度は触媒金属種として電気化学的に発生させた活性パラジウム種を用いて様々なカップリング反応について検討した。申請者らは既に電気化学的触媒再活性化プロセスを組み込んだアリールボロン酸のホモカップリング反応、末端アルキンのホモカップリング反応、そしてアリールボロン酸と末端アルキンとのクロスカップリング反応を報告している。これらの触媒系は通常の触媒系に比べて高い触媒活性と広い基質一般性を示すが問題点がないわけではなかった。たとえば、アリールボロン酸のホモカップリング反応によるビアリール合成において、ブロモ基のようなハロゲン置換基を導入すると反応性が著しく低下することがわかっていた。また、アルキンのホモカップリング反応によるジイン合成においても共触媒として銅を添加する必要があった。今回これらの反応系のさらに改良した。アリールボロン酸の反応系においては、これまで共酸化剤として用いていたTEMPOに替えてpbq (パラベンゾキノン) を用い加熱することで、ハロゲン置換基を有する基質もホモカップリング反応へ適用可能であることを見いだした。これは系中で発生する触媒活性種が用いる共酸化剤によって変化することとに起因すると考えられる。また、ジインのホモカップリング反応においても同様の知見を得ている。すなわち、従来用いていたTEMPOの代わりにpbqを用いると銅触媒の添加が不要になり、Pd触媒のみで反応が進行することを見いだした。本条件下ではこれまでは適用困難だった反応基質でも反応が進行した。用いる基質によって最適系が異なるのでこれらの反応条件を巧みに使い分けることが、カップリング反応の収率向上につながると考えられる。また、電気化学的なクロスカップリング反応においても新規物質の創成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の一年目の目標は電解酸化プロセスを利用した酸化的ホモカップリング及びクロスカップリング反応の開発である。我々が従来開発してきた反応系とは異なる有機金属種を発生させることにより、広い基質一般性を有する酸化的カップリング反応を開発することに成功した。たとえば、アリールボロン酸のホモカップリング反応は共酸化剤を替えることで劇的に反応性が変化することを見いだした。これは共酸化剤が単に共酸化剤としてき機能しているのではなく触媒の配位子としても機能していると考えるのが妥当であると思われる。すなわち、共酸化剤のチューニングがカップリング反応の反応性へおおきく影響するという新たな知見を得ることができた。また、アルキンのホモカップリング反応は共酸化剤を変えることで銅触媒の添加が不要となった。銅触媒を加えたときの触媒活性種は有機銅種であるのに対し、銅触媒を用いない場合は有機パラジウム種が活性種となる。すなわち、全く異なる活性種が系中で発生しているはずであり、実際に反応性も全く異なるという知見が得られた。これらの知見は単にこれらの反応系だけの問題ではなく、電気化学プロセスをくみこんだ有機金属反応全般に応用可能な知見で有り、研究として意義深いと考えられる。今回開発した反応と同等の反応はおそらくは化学量論量の化学酸化剤を用いれば実現可能ではあるが、電気化学的プロセスを巧みに組み合わせることで、共酸化剤に触媒化に成功し、穏やかな条件下での反応を実現している。よって、電解酸化プロセスを利用した酸化的ホモカップリング及びクロスカップリング反応の開発という最大の目標を達成したと考えられる。また、本系は共酸化剤が触媒量しか入っていないので、電気を切ると、系はほぼ中性の非酸化条件になることもわかった。この性質を利用すると、電気を用いない通常のカップリング反応との連続反応も可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らの開発した電気化学的なカップリング反応の大きな特徴は、遷移金属を用いた触媒反応の触媒の酸化的再活性化過程に電気化学的な酸化プロセスを利用することで、従来は化学両論量必要とした酸化剤を触媒量に減ずることが可能な点である。そのために、従来の系とは異なり、電気をオフにするだけで系中は酸化条件からほぼ中性の非酸化条件に変化することを最近申請者らは見いだしている。現在、この性質を利用した連続反応による拡張π電子系の構築が、科学研究費補助金新学術領域の研究課題として採択されている。本研究においては、そのような連続反応へ適用の可否にも注目しつつ新反応の開発をめざすのが今後の方策である。このような連続プロセスにおいて、これまでに分かっている問題点としては、電気化学的なカップリング反応と通常のカップリング反応を組み合わせて連続反応にする際に、組み合わせる反応によっては、本来なら効率よく進行するはずの二段階目の反応の活性が著しく低下することがあることである。様々な解決策を模索したが、今のところ、簡便かつ有効な手段は見いだせていない。今後の方策としては、このような問題を解決することと、最初から問題の生じない反応系設計が重要だと考えている。また、当初の構想通り、多様なカップリング反応の開発と並行して、電気化学的に発生させた活性種を組み込んだ、有機電気化学の特徴を活かした反応系の設計を目指す方針である。電気化学的手法を用いるとその他の方法では発生困難な様々な活性種が発生可能である。この特徴を活かした反応設計をおこないたい。また、これらの反応により得られた新奇分子については、紫外・可視吸光スペクトルやサイクリックボルタンメトリー等を測定し、光学的・電気化学的性質等の物性についても評価していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を遂行するに当たり必要な機器類は基本的には本研究一年目に購入したの本年度は機器類の購入は必要ない。二年目は試薬・溶媒・ガラス器具の購入が主となる予定である。また、電解セルがもし破損等により不足するようなら補充する。また、本研究本研究を発展させ、国内学会のみならず、海外の学会でも発表し、研究成果を社会に還元したい。その他の経費としては、本研究成果を論文にまとめて報告する際に英文校閲を受ける必要があるので校閲代が発生する。
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Research Products
(23 results)