2011 Fiscal Year Research-status Report
新規鉄触媒設計に基づくアジドを用いるナイトレン移動反応に関する研究
Project/Area Number |
23750116
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
江上 寛通 独立行政法人理化学研究所, 袖岡有機合成化学研究室, 客員研究員 (50553848)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 酸化反応 / 触媒 / 遷移金属 / 鉄 / ナイトレン / アジド |
Research Abstract |
ナイトレン移動反応は直截的に有機分子骨格に窒素官能基を施すことができることから、特に近年注目を集めている反応である。環境調和の観点から用いるナイトレン前駆体はアジドが理想的である。一方近年、安価で豊富に存在する鉄を触媒とした研究が活発に行われている。しかしながら、鉄触媒によるアジドをナイトレン移動反応に用いた例は極めて少ない。そこで本研究では、アジドをナイトレン前駆体に用いる新たな方法論を開発すべく、新規鉄触媒を設計、合成することを目的とする。 本研究目的達成のため、本年度はまず、当初の仮説に基づいた様々な鉄二核錯体の設計を行い、新規配位子のモジュラー型合成法の開発を行った。具体的には、設計した配位子を4~5つのパーツに分割し、それぞれをHartwig-Buchwaldカップリングや還元的アミノ化を駆使することで、収束的合成法による一般的方法論を確立することができた。これにより配位子の構造最適化が迅速に行えるものと期待される。 次いで、これら新規配位子を用いた鉄錯体の合成法の確立を目指し、種々検討を行った。現在までに新規鉄錯体の単離には至ってはいないものの、ESI-MSによる測定結果から、新規鉄錯体の形成は確認された。しかし現在、具体的な構造に関する知見は得られていない。そのため今後はさらに条件を検討、最適化し、新規鉄錯体の単離、結晶化を試みる。また本年度は、鉄以外にも銅、コバルト、パラジウムなどの他の遷移金属に関しても同様に検討し、多角的視野から新規配位子に関する知見の蓄積を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、新規に設計した配位子の合成法を確立でき、様々な金属錯体の合成にも着手できた。未だアジドをナイトレン前駆体として用いることには成功していないものの、配位子や錯体に関する知見を得ることができたため、おおむね順調であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは新規鉄錯体の合成、単離の条件を再度検討し、結晶化を試みる。その後、研究計画通りにアジドを用いたナイトレン移動反応の検討を行うとともに、新規鉄錯体の物性、反応性を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も新規錯体の合成法の検討、配位子の検討を行い、同時にナイトレン移動反応を検討するため、多くの金属試薬と有機化合物を購入する。また学会発表も行う予定であり、旅費としても使用する予定である。
|