2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23750117
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小門 憲太 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40600226)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 凝集誘起型発光 |
Research Abstract |
機械的応力は、材料の疲労や破断に直接関与する重要な外部刺激であり、社会資本構造物や産業構造物の事故防止や長寿命化のために、材料が受ける機械的応力を分子レベルで直接観測できる技術へのニーズが高まっている。本申請研究では、分子集合体に拠らずに単分子で外部応力を可視化する手法として、凝集誘起型発光(AIE)色素を用いることを計画している。AIE色素を用いて機械的応力に対する応答材料とする試みは、On-Off応答可能な発光材料が期待できる上に、有機修飾によってAIE色素とマトリックスの結合様式なども自在に設計できる。このシステムを実現する方法として、代表的なAIE色素であるテトラフェニルエテン(TPE)を様々な高分子材料と混合・結合し、力学環境下での発光挙動について詳細に検討を行うことで、応答性発光を効率的に得るための条件の最適化を行う。本年度は、TPEへのさまざまな化学修飾を行い、リビングラジカル重合の開始剤、あるいは高分子の架橋剤となることのできる官能基を有するAIE色素の合成に成功した。具体的には、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンを、四塩化チタンを用いたマクマリーカップリングに付すことにより、テトラメトキシフェニルエテンを合成し、引き続く三臭化ホウ素による脱メトキシ化を経てテトラヒドロキシフェニルエテンを得た。これにWilliamsonエーテル合成やエステル化を施すことにより、架橋剤や開始剤となる骨格を得ることができた。さらにトリ置換体やジ置換体もPetersonオレフィン化反応などを用いることによって達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではAIE色素を導入した高分子材料の力学環境下での観察を最終目的としている。その足場となる分子を合成するべく、本年度は、TPEへのさまざまな化学修飾を行い、リビングラジカル重合の開始剤、あるいは高分子の架橋剤となることのできる官能基を有するAIE色素の合成に成功した。具体的には、四塩化チタンによるマクマリーカップリングを用いて、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンからテトラメトキシフェニルエテンを合成し、三臭化ホウ素で脱メトキシ化することによりテトラヒドロキシフェニルエテンを得た。これを基本骨格としてWilliamsonエーテル合成やエステル化を施すことにより、架橋剤や開始剤を合成する基礎的な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に得られた修飾TPEを用いてリビングラジカル重合や高分子の架橋を行ない、高分子材料を作成した後に応力を印加した時の発光挙動の変化に関して詳細に検討を行なう。具体的な材料としてはシリコーン系の樹脂を考えている。さらに、スペクトルを得るだけでなく、CLSMを用いた応力マッピングや伸展刺激環境下でのCLSM観察など、顕微鏡技術を合わせた応力の可視化を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の節減の結果生じた使用残について、測定用顕微鏡への設備追加や依頼測定料に使用する。
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