2012 Fiscal Year Research-status Report
らせん構造を反応場構築の鍵とする高分子不斉触媒の開発
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23750123
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯田 拡基 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30464150)
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Keywords | らせん構造 / キラル / ポリフェニルアセチレン / 高分子不斉触媒 |
Research Abstract |
本研究では、広範な反応に良好な不斉触媒能を発揮する天然由来の光学活性有機分子であるシンコナアルカロイド類に注目し、その誘導体をポリフェニルアセチレンの側鎖に導入した種々の光学活性らせん高分子を合成するとともに、そのらせん構造や不斉触媒能、不斉識別能について検討を行い、以下に示す成果を得た。 シンコナアルカロイドであるシンコニジンおよびシンコニン、キニーネ、キニジン誘導体を、アミド基をリンカーとして側鎖に導入した種々のポリフェニルアセチレンを合成し、得られた光学活性高分子をHPLC用キラルカラムのキラル固定相として用いてその光学分割能を調べた。その結果、一方向巻きに片寄ったらせん構造に由来する高度な不斉識別能が発現し、種々のアルコールや金属錯体、アミノ酸誘導体などを光学分割できることを見出した。 さらに、シンコナアルカロイド側鎖を主鎖に結びつけるリンカー部位として、より強い水素結合形成能を発揮するスルホンアミド基を用いたポリフェニルアセチレンを合成し、それらがアニリンとカルコンを基質に用いるアザマイケル反応の良好な不斉触媒として働くことを見出した。特に、シンコニジン由来の側鎖を有するらせん高分子は、最大86% eeで対応する生成物を与えた。一方、らせん高分子に機械的な力を加え、主鎖のらせんをランダム構造へと変換したポリマーや、モノマーを触媒として用いた場合では、それぞれ不斉選択性がほとんど観測されず(<5% ee)、らせんキラリティーの影響により高い不斉選択性が発現したことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、側鎖のシンコナアルカロイド部位と主鎖を連結するリンカー部位にスルホンアミド基を導入した種々のらせん高分子の合成に成功するとともに、得られたらせん高分子がらせん構造に特異的な不斉触媒能が発現することを明らかにした。さらに、リンカー部位にアミド基を有するポリフェニルアセチレン誘導体が、らせん構造由来の光学分割能を発現し、実用的なキラル固定相として利用できることも見出しており、本研究課題は当初の計画以上に進展しつつあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
シンコナアルカロイド誘導体に加え、イミダゾリジノン誘導体などの有機触媒能を有する分子構造を側鎖に導入した様々ならせん高分子を合成し、側鎖の触媒部位がらせん状に配列制御されるかどうかについて検討を行う。また、得られたらせん高分子触媒が、らせん構造に特異的な不斉選択性や触媒活性を発現するかどうかについて、様々な触媒反応を検討し詳細に調べる。さらに、外部刺激によるらせん構造の動的制御を利用して、不斉触媒能や触媒活性などの触媒機能の自在制御が可能かどうか試みる。すなわち、得られた高分子不斉触媒のらせんの巻き方向やピッチが、熱や溶媒、金属やゲスト化合物の添加といった外部刺激により変化するどうかについて調べるとともに、これらのらせん構造の動的制御を通じて、発現する不斉選択性や触媒活性が変化するかどうかについて詳細に検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はらせん高分子触媒を用いて種々の不斉反応を検討する予定であるため、前年度からの繰越額とあわせ、合成用試薬やガラス器具類、実験用消耗品を購入するとともに、AFM測定などに用いる分析用消耗品の購入を計画している。さらに、研究成果を国内及び外国で積極的に発表するための旅費として使用する。
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Research Products
(25 results)