2012 Fiscal Year Annual Research Report
らせん高分子を用いた高効率不斉増幅を特徴とする触媒的不斉合成反応系の開発
Project/Area Number |
23750126
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長田 裕也 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60512762)
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Keywords | らせん高分子 / らせん不斉誘起 / エキシマー発光 / ポリキノキサリン |
Research Abstract |
らせん高分子に関する研究において、モノマーの鏡像体過剰率よりもポリマーのらせん方向過剰率が大幅に高くなるという不斉増幅現象が知られているが、従来不斉反応場としての利用は困難であった。一方で、近年申請者の所属する研究室において一方向巻きポリキノキサリンに金属に配位可能な部位としてホスフィノ基を導入すると、不斉触媒反応の配位子として有効に機能し、高い鏡像体過剰率を有する生成物が得られることを明らかにしている。 そこで本研究課題では、まず低分子キラル化合物と高分子末端との相互作用によって高分子全体のらせん不斉の制御について検討を行なった。末端にボロニル基を有するアキラルなポリキノキサリンを合成し、光学活性ジオールと反応させたところ、主鎖に由来する円偏光二色性が観測され、ポリキノキサリンの主鎖にらせん不斉が誘起されたことが分かった。また、一旦導入した光学活性ジオールは加水分解によって除去可能であり、除去後に対掌体の光学活性ジオールを導入することで、逆の不斉らせんを誘起できることが分かった。 続いて、ポリキノキサリンにおける高効率ならせん不斉誘起の詳細について検討を行なうため、ポリキノキサリンに導入されたキラル側鎖上に、ピレニル基の導入を行なった。様々な溶媒中で主鎖のらせん不斉と、ピレニル基からのエキシマー発光強度との関係を調べた所、強いエキシマー発光を示す溶媒中において、より効果的ならせん不斉誘起が起こることを見出した。これらの検討から、ポリキノキサリン特有のらせん不斉誘起・不斉増幅現象を明らかにすることができた。これらの知見を活かすことで、より効果的な不斉合成反応系の実現に繋がるものと期待される。
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