2012 Fiscal Year Research-status Report
水素結合を利用した立体特異性ラジカル・アニオン重合と統計的2次元NMRによる解析
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23750130
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
平野 朋広 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (80314839)
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Keywords | 立体規則性 / NMR / 主成分分析 / 帰属 / 水素結合 |
Research Abstract |
スズ錯体やアルミニウム錯体を開始剤とするL-ラクチドとD-ラクチドの混合物の開環重合を行い,種々の立体規則性を有するポリマーを合成した.メチル基をホモゲートデカップリングしたメチン基の1H NMRスペクトルについて主成分分析を行った.メチン基のシグナルは4連子立体規則性によって分裂するが,第一主成分がC末端側3連子立体規則性を反映し,第二主成分がO末端側の末端2連子立体規則性を反映することがわかった. トルエン中低温でのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAAm)のラジカル重合でイソタクチシチーに富むポリマーを,酒石酸エステルを添加することでシンジオタクチシチーに富むポリマーを合成した.また,極性溶媒中でのラジカル重合系にLi塩を添加することで,ヘテロタクチシチーに富むと思われるポリマーを合成した.得られたポリマーの主鎖メチレン基の1H NMRスペクトルについて主成分分析を行ったところ,3連子立体規則性による分裂を示唆する結果が得られた.この結果は,COSY法で得られる情報と同等のものである. テトラ-tert-ブチル亜鉛酸ジリチウムを開始剤として,メタクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸tert-ブチル(TBMA)のアニオン共重合を行い,立体規則性の異なる共重合体を合成した.酸触媒で TBMA単位を加水分解し,Me3SiCHN2でPMMAへと変換した.得られたPMMAの13C NMRスペクトルについて主成分分析を行ったところ,主鎖4級炭素によるシグナルとカルボニル炭素や主鎖メチレン炭素のシグナルとの間に良い相関が見られ,立体規則性による帰属が4連子~5連子レベルで説明可能であることが明らかとなった.これは,13Cラベルを施さなくても本手法を用いればINADEQUATE法と同等の情報が得られることを意味している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統計的2次元NMR法によるポリマーのキャラクタリゼーションが,対象となるポリマーの種類が変わっても有効であることが明らかになりつつあるため.
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Strategy for Future Research Activity |
ポリラクチドの系ではシンジオタクチシチーに富むポリマーを合成できなかったため,シンジオタクチックな連鎖のシグナルの帰属には至らなかった.D-/L-乳酸2量体を別途合成し,直接重縮合することでシンジオタクチックリッチなポリマーを合成し,すべての立体規則性による帰属が説明可能であるかどうかを調べる. poly(DMAAm)をポリアクリル酸メチル[poly(MA)]へと変換する. poly(DMAAm)の1H NMRスペクトルとpoly(MA)の13C NMRスペクトルとの間で多変量解析を行い,poly(DMAAm)の1H NMRスペクトルから3連子立体規則性分布を求めることができないか検討する. 立体規則性の異なるpoly(TBMA)を合成する.約50%のTBMA単位をMMA単位へと変換し,立体規則性の異なるpoly(MMA-co-TBMA)を合成する.さらに残り50%のTBMA単位もMMA単位へと変換して,PMMAを合成する.poly(MMA-co-TBMA)とPMMAの13C NMRスペクトル間で多変量解析を行い,複雑に分裂した共重合体のNMRスペクトルの帰属を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サンプルの合成試薬やNMR測定用の重水素化溶媒,NMRチューブや液体ヘリウムなどの物品の購入に当てる.
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