2012 Fiscal Year Annual Research Report
サイズ効果を用いた高プロトン伝導高分子電解質膜の創成とメカニズム解析
Project/Area Number |
23750132
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
藤井 義久 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (70578062)
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Keywords | 高分子電解質 / 薄膜 |
Research Abstract |
パーフルオロスルホン酸系イオン交換膜はプロトン伝導型の固体高分子形燃料電池や水の電気分解の電解質膜として使用されている。これまで、厚さが50~200 μm程度の膜が使用されてきたが、さらに膜を薄くすると機械的強度の低下と引き替えに、プロトン伝導性が向上することが知られている。また、含水率の増加に伴いプロトン伝導性が向上することも知られているが、薄膜状態におけるプロトン伝導メカニズムの解明には至っていない。申請者は、高分子電解質膜の凝集構造におよぼす膜厚の効果について明らかにした。 Nafion膜の水浸漬時間と気泡接触角の関係では、浸漬直後における厚さ50および300 nmのNafion膜の接触角は、それぞれ31および28 °であった。これは、薄膜化に伴い膜表面が疎水的になることを示唆している。また、いずれの膜においても、接触角は浸漬時間の増加に伴い低下した。これは、水との接触により親水性のスルホン基を有する側鎖が膜表面へ濃縮、ならびに、水の収着によりNafion膜の凝集構造が変化したと考えることで説明できる。 水中におけるNafion膜の厚さ変化と浸漬時間の関係では、膜厚の変化量(hwater/hair)は水中における膜厚(hwater)を真空乾燥直後の大気中における膜厚(hair)で除することで定義した。いずれの膜においても浸漬直後から10 min程度で急激に膜厚が増加した。また、厚さ50 nmのNafion膜におけるhwater/hairの平衡値は1.3であり、厚さ300 nmにおける平衡値1.5と比較して小さかった。これは、Nafion膜への水分子の収着量は膜厚の減少に伴い低下することを意味している。 以上の結果より、Nafion膜は薄膜化に伴い大気中および水中における凝集構造が変化することを明らかにした。
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