2011 Fiscal Year Research-status Report
螺旋状ミエリンにおけるプロトン協同低障壁マクロダイナミクスの作動制御
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23750142
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
景山 義之 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90447326)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 自己集合体 / プロトン / 非平衡 / 凝縮系 / 界面 / 超分子機械 / 分子モーター / 異性化 |
Research Abstract |
本研究では、両親媒性分子によって形成されるミエリン形自己集合体の構造を、添加した機能性有機分子によって変化させることを目的としている。ミエリン形自己集合体内部において両親媒性分子は、弱い相互作用で規則的に配列している。そのため、集合体周辺のプロトンの活量や、添加された分子の性状変化によって、集合体の集積様式を変えることができ、ダイナミックな巨視的変化が観測されると予想される。 本年度は、オレイン酸から形成されるミエリン形自己集合体を、光・酸化還元活性を有する両親媒性アゾベンゼンおよびフラビン誘導体によって構造変化させた。このうち、両親媒性アゾベンゼンを10%含んだミエリン形自己集合体では、紫外光の照射によるミエリンの伸張挙動と、可視光の照射によるミエリンの巻き戻り挙動とが観察された。両親媒性アゾベンゼンを1%に減らした場合には、構造変化がゆっくり・長時間かけて進行した。これを光異性化反応速度を踏まえて検討したところ、この構造変化が、アゾベンゼンのトランスからシスへの一方向の光異性化によって単純に起こされているのではなく、集合体内でアゾベンゼンが光と熱によりトランス→シス→トランス→シスと繰り返し異性化する「分子モーター」によって引き起こされていると推察された。 大きさ1ミリメートルスケールの超分子を分子モーターで動作させる研究例は予想されるインパクトが高く、その綿密な検証が急がれる。 また、プロトンの活量に依存して構造変化が起きることを明白にするため、オレイン酸の酸塩基滴定を行い、その巨視的構造との相関関係を明らかにした。本研究計画の背景にあった、ミエリン状自己集合体の構造変化を伴ったpH緩衝作用を、より定量的に明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としては、予想より進行している一方、遅れている点も存在するから。【当初計画以上に進展した点】(1)「分子モーター」型の機能性有機分子によりマクロダイナミクスの発現を行うことができることが見えた点。(2)平成24年度実施計画のプロトン活量変化とマクロ構造変化の関係を調べる実験を進められた点。【当初計画通りに進展した点】(1)酸化還元部位を有する有機分子を、一部分子設計を変更したものの合成できた点。【当初計画に対して遅れている点】(1)自己集積膜(SAM)上への螺旋状ミエリン形自己集積体の固定化が未達成である点。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、機能性SAM上への螺旋状ミエリン形自己集合体の形成に取り組み、当初計画通り、その酸化還元に伴ったマクロダイナミクスの発現実験を試みる。その分子レベルでの機序を、当初計画通り物理化学的計測によって明らかにしていく。この際、反応量と構造変化の相関関係を、当初計画より綿密に行うことで、機能性分子が一分子辺り一回のみ機能するのか、それとも一分子が複数回機能するのかも明らかにできるよう努力する。 併せて、オレイン酸の構造可塑性の起源についての検討と、分子モーター型機能性有機分子導入時の構造変化の特性評価についても、並行して実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進展に伴い、自己集合体の巨視的構造変化に伴う分子の動き・作用機序を物理化学的に計測するための知見を得ることの重要性が増している。その計測手法を体得するために、3ヶ月程度の海外研修を行うことにした。このため、国際学会における発表を、研修地を出発地とした旅行にすることで、外国旅費経費を減らすことができる見込みである。一方、研究をより推し進めるため、二名の学生に研究協力者となって頂く。これにより、実験用消耗品および測定のための国内旅費が予定より必要となる見込みであり、総額としては必要経費が当初予算額よりも多くなる。 前年度の会計残金154,506円のうち、58,817円は、消耗品費および書籍費であり、物品は納品済みであり、目下使用中である。業者より支払い請求が届いている一方、支払いが次年度になったものである。また、26,362円は、納品済みである一方、支払い請求が次年度になった消耗品費・書籍費(同じく使用中)であり、15,900円は、年度末時点で未納品の書籍費である。実質の繰越額は、53,427円(平成23年度予算の2.5%相当)であり、平成24年度予算額1,500千円と併せて、上記計画の研究に活かす予定である。
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Research Products
(10 results)