2012 Fiscal Year Annual Research Report
螺旋状ミエリンにおけるプロトン協同低障壁マクロダイナミクスの作動制御
Project/Area Number |
23750142
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
景山 義之 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90447326)
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Keywords | 超分子モーター / 協同現象 / 酸解離挙動 / 自己集積体 / マクロダイナミクス / 界面の状態 / 非線形現象 / 光異性化 |
Research Abstract |
本研究では、両親媒性分子によって形成される螺旋状ミエリン形自己集積体(以下、螺旋状ミエリン)のマクロスコピックな構造を、添加した機能性有機分子によって変化させることを目的としている。螺旋状ミエリン内において両親媒性分子は、弱い相互作用で配列していることから、螺旋状ミエリン周辺のプロトンの活量や、添加された分子の性状変化によって、その配列を変えることが予想される。研究初年度に、両親媒性アゾベンゼンを少量混合したオレイン酸の螺旋状ミエリンの、光誘起マクロダイナミクスを創出した。本年度(最終年度)は、このダイナミクスについて、機構を複数のアプローチにより探った。 【分子構造からのアプローチ】鎖長の異なるアルキル基を有する両親媒性アゾベンゼンを用いて、光誘起マクロダイナミクスの比較を行った。いずれも、紫外光および可視光によって、螺旋状ミエリンの回転と反転とがスイッチングするマクロダイナミクスが発現した。このことから、アゾベンゼン部位の界面からの位置は、ダイナミクスの発現に強くは関与しないことが分かった。 【酸解離挙動からのアプローチ】両親媒性アゾベンゼンを混合したオレイン酸ナトリウムの分散液について、光異性化前後のpH滴定曲線を実験により描いた。結果、紫外光照射により、カルボキシ基の酸解離が促進されることが判明した。 【動作速度からのアプローチ】マクロダイナミクスのビデオ観測から、光照射後、運動を起こすまでには誘導時間が存在することが判明した。 以上より、アゾベンゼンの光異性化に伴う実効体積の変化が、カルボキシ基間の平均距離を変化させることにより、その酸解離挙動を変化させ、集積様式が変化し、マクロダイナミクスが発現しているものと示唆される。このプロトンダイナミクスが協同的に働いた、光によって制御される螺旋状ミエリンのマクロダイナミクスの創成は、本計画研究が成功裏に達成されたことを示す。
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