2011 Fiscal Year Research-status Report
高効率ケイ素型光増感色素を用いた近赤外光応答トリプルターゲティング癌治療薬の創製
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23750145
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
堀内 宏明 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00334136)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光増感剤 / 一重項酸素 / 光線力学療法 / ドラッグデリバリー / 近赤外光 |
Research Abstract |
本研究課題ではナノサイズのドラッグキャリアと光増感剤をオレフィンユニットにより連結し、近赤外光を吸収した光増感剤によって発生する一重項酸素を利用してキャリアから光増感剤を放出させるシステムの構築を目指している。これに対し本年度は、1.オレフィンユニットの光開裂効率の評価、2.オレフィンユニットと光増感剤の連結化合物の合成、3.光増感剤の高効率化、を行った。1.オレフィンユニットには一重項酸素との反応で開裂することが知られているcis-diphenoxyethyleneを用い、一重項酸素との反応速度定数を決定した。反応速度定数は小さいが、強い光源を用いれば短時間の照射でも薬剤放出が可能であるレベルであることがわかった。2.オレフィンと光増感剤の連結化合物の合成については、連結化合物の合成に成功した。現在は評価に必要な量を確保するために、スケールアップした合成を進めている。3.光増感剤の改良には、中心金属の導入とπ共役系の拡張を行った。中心金属としてZn, Pd, Cu, Siを検討した結果、Pdの導入により一重項酸素の光増感効率と細胞による取込効率の向上に成功した。しかし吸収帯が短波長シフトしたため、がん細胞に対する光細胞毒性の向上はわずかであった。一方、Si(Pr)2を導入すると、吸収帯はシフトすることなく、分子吸光係数が約10倍に向上することがわかった。π共役系の拡張については、ポルフィリン骨格をベンゾポルフィリン骨格に拡張することにより72 nmの長波長シフトに成功した。さらにシリル基を導入することにより一重項酸素の光増感効率が1.5倍に向上した。これらの結果に基づくと、シリルベンゾポルフィリンにより生体組織中で一重項酸素を発生する効率はポルフィリンの10倍程度に向上すると見込まれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光増感剤とオレフィンユニットとの反応性の評価に関しては、反応効率の定量化や溶媒などの環境の違いの影響が評価できておらず、当初の予定より若干遅れている。しかしその一方で、目標分子の合成に成功し、光増感剤の改良については新たな発見があり、高効率化の指標を決定することができた。総合的に見ればおおむね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは今年度中に評価を終えることができなかった、反応効率の定量化や溶媒効果の評価を進める。それと平行して、今年度得られた知見を総合することにより高効率光増感剤の開発を進める予定である。 次に光増感色素/オレフィン/ナノ粒子複合体の合成方法の確立を目指す。また、ナノ粒子への光増感剤の導入量が最大になるよう反応条件を最適化する。合成できた光増感色素/オレフィン/ナノ粒子複合体については一重項酸素の光増感効率・薬剤放出特性などを評価し、近赤外光応答型トリプルターゲティング癌治療薬としての能力を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
化合物の合成や評価に用いる各種消耗品として1200000円、旅費として400000円、論文投稿費などのその他として100000円を使用する計画である。
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