2011 Fiscal Year Research-status Report
キラルイオン液体の光学選択的溶媒和力を用いたキラル体分離膜の開発
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23750147
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
一川 尚広 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80598798)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 膜・集合体 / イオン液体 |
Research Abstract |
本研究では、分割対象化合物(特にアミノ酸など)のL体・D体のそれぞれがキラルイオン液体中で形成するイオンクラスター構造のサイズの違いを利用し、サイズ分離膜による高効率な光学分割を目指す。分離膜によるラセミ体の光学分割ができれば、薬剤などの光学活性な材料の合成・精製を非常に簡便かつクリーンに行うことができると考えられる。高効率なサイズ分離能を有する分離膜を構築するにはナノレベルでオーダーの揃ったチャンネル構造の構築が不可欠である。このようなナノ構造を構築する手法として、液晶性分子の自己組織化に着目した。特に、ナノ相分離型の液晶相の中でも、三次元的なナノチャンネル構造を形成する双連続キュービック構造が最適と考えた。光学分割を達成するには、ナノチャンネルへのキラル認識能の導入が不可欠である。キラル認識能を導入するにあたり、キラルなイオン液体の利用が有用であると考えた。キラルなイオン液体としてはアミノ酸をアニオンとして有するアミノ酸イオン液体に着目した。既報の合成ルートに従うことでキラルな構造を有するアミノ酸イオン液体の合成を行った。このイオン液体と種々の両親媒性化合物を複合化させ、それらの分子集合構造を調べた。構造解析は、偏光顕微鏡観察・示差走査熱量測定・X線回折測定を用いて行った。複合体はイオン液体のイオン構造や両親媒性分子の分子構造の違いによって多種多様のナノ集合構造を形成した。それらの検討の中で、目的の双連続キュービック液晶相を発現するイオン液体と両親媒性の化合物の組み合わせの指針を立てることに成功した。この双連続キュービック液晶構造内において、キラルなイオン液体は三次元的なナノチャンネル状に組織化されている。今後、これらのナノチャンネル構造を利用することで光学分割分離膜への応用を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するにあたり3つの課題がある。1)双連続キュービック構造を形成するキラルイオン液体と両親媒性分子の組み合わせの探索。2)得られた液晶構造の固定化手法の確立。3)実際に分離能があるかどうかの評価。である。平成23年度の一年間において、最初の課題1)は達成することができた。双連続キュービック相は非常に珍しい液晶相の一種であり、双連続キュービック相を発現する液晶材料のデザインは一般的に非常に難しいとされている。それゆえ、その難題をクリアできたことを考慮すると、研究の目的達成への過程はおおむね順調に進展していると言える。2)の課題をクリアする具体的な対策は検討済みであるので、あとは化学合成および化合物の精製手法の確立を行うことができれば目的の最終課題の達成に大きく前進できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた知見を基に、液晶が自己組織的に形成するナノ構造を固定化する手法の探索を行う。具体的には、両親媒性液晶分子に重合基を有する分子を設計・合成するといったアプローチを検討している。また、多段階の合成ステップを必要とする化合物になることが予想されるので、設計した分子の精製手法を確立することが重要である。次に、得られた両親媒性分子とキラルイオン液体とを混合し、混合体が自己組織的に形成する分子集合構造を詳細に調べる。構造解析は偏光顕微鏡観察やX線回折測定により行う。更に、形成した自己組織構造を固定化し、キラル分離膜として機能するかを調べる。固定化には光照射によるバルク状態での重合によるポリマー化を主に考えているが、その他にも有用な手法を探索し検討する。分離膜としての評価は簡便な減圧・加圧濾過装置などを用いて行ってみる予定である。得られたポリマーフィルムが耐圧性を有しているかなどを調べることも重要ではないかと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費の使い道としては、ポリマーを分離膜として評価するための「ろ過装置」や材料(液晶やイオン液体)から溶媒を除去するための装置である「加熱真空装置」などの購入を検討を考えている。また、マテリアルを合成するために必要な各種試薬の購入に充てる。旅費は海外の学術会議への参加のために用いる。学術会議に参加することで、自身の研究成果を世に広めるだけでなく、今後の本研究遂行に有用な知見の収集に努める。人件費・謝金は、海外学術誌へ投稿する論文の校正費などに充てる。その他の直接経費に関しては、液晶やイオン液体や高分子の学会の会員費などへ用いる予定である。
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Research Products
(8 results)