2011 Fiscal Year Research-status Report
高機能性および抗酸化能をもつ多鎖型両親媒性デンドリマー保護ナノコロイドの開発
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23750163
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
吉村 倫一 奈良女子大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (10339111)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | コロイド・界面化学 / 両親媒性化合物 / 自己組織化 / ナノ材料 |
Research Abstract |
本申請では、高い抗酸化能および機能性を有する金または白金ナノコロイド粒子の開発を目指し、保護剤としてデンドリマー骨格に2または3本のアルキル鎖を導入した2鎖型、ジェミニ型、トリメリック型の3種類の多鎖型両親媒性デンドリマーおよびそのデンドリマー末端基を糖鎖やポリエチレングリコール鎖で修飾した両親媒性デンドリマーを分子設計・合成し、それらの水溶液中における物性ならびに会合挙動を調べる。さらに、これらの両親媒性デンドリマーを保護剤として用いて金・白金ナノ粒子を調製し、スクワランとの乳化能や活性酸素消去活性を検討する。本申請での金・白金ナノコロイドは、化粧品などの分野に貢献できると期待される。1.ジェミニ型両親媒性デンドリマーの合成と末端基の修飾 エチレンジアミンと臭化ドデシルの反応によりN,N’-ジドデシルエチレンジアミンを合成した。得られたN,N’-ジドデシルエチレンジアミンを出発物質のコアに用いて、メタノール溶媒中でアクリル酸メチルとエチレンジアミンを交互に反応させるDivergent法により(40℃で100~200時間)、世代1~5のジェミニ型の両親媒性デンドリマーを合成した。さらに、ジェミニ型両親媒性デンドリマーのデンドリマー部分のアミノ末端基に、ラクトース糖鎖を修飾させて、両親媒性多糖デンドリマーを合成した。2.基礎物性と会合体のナノ構造 合成した多鎖型両親媒性デンドリマーの界面活性物質としての性質を表面張力測定により調べ、気/液界面での吸着・配向性について検討した。また、水溶液中で形成する会合体のナノ構造を、動的光散乱、蛍光、低温透過型電子顕微鏡(cryo-TEM)、X線小角散乱(SAXS、SPring-8設置のBL40B2使用)により調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請では、高い抗酸化能および機能性を有する金または白金ナノコロイド粒子の保護剤として、デンドリマー骨格に2または3本のアルキル鎖を導入した2鎖型、ジェミニ型、トリメリック型の3種類の多鎖型両親媒性デンドリマーをまず分子設計・合成する計画であったが、ジェミニ型両親媒性デンドリマー(世代1~5)のみ合成に成功した。2鎖型とトリメリック型については試行錯誤して合成を試みたが、現時点でうまくいっていない。次に、得られた両親媒性デンドリマーのデンドロン末端基を糖鎖やポリエチレングリコール鎖で修飾した両親媒性デンドリマーを分子設計・合成する計画は、ジェミニ型の糖鎖修飾は合成に成功したが、ポリエチレングリコール修飾はまだ試みていない。 合成したジェミニ型両親媒性デンドリマーおよび糖鎖で修飾した多糖デンドリマーの水溶液中における物性ならびに会合挙動の検討に関しては、予定していたすべての実験を終了した。また、両親媒性デンドリマーを保護剤として用いて金および白金ナノ粒子を調製し、それらのDPPHラジカルの活性酸素消去活性について検討し、計画通りに進んだ。両親媒性デンドリマーとスクワランとの乳化能については、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、合成したジェミニ型両親媒性デンドリマーの乳化能の評価および活性酸素消去活性の評価について詳しく検討していく。 乳化能の実験に関しては、水相に多鎖型両親媒性デンドリマーまたはそれで保護した金・白金ナノ粒子を、油相にスクワランを用いる。この水相と油相を任意の比で混ぜて、ホモジナイザー、超音波処理によりエマルションを形成させる。生成したエマルションの安定性を溶液・安定性・分散性評価装置タービスキャンMAを用いて評価し、粒子径を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)により調べる。また、水相と油相の界面に働く界面張力および界面粘弾性を界面粘弾性測定装置Trackerを用いて調べ、エマルションとの関連性について検討する。また、エマルションの生成機構(メカニズム)についても調べる。 活性酸素消去活性の実験に関しては、活性酸素としてヒドロキシルラジカルを用い、過酸化水素を紫外線照射(超高圧水銀灯照射装置使用)して生成するヒドロキシルラジカルの消去反応について、スピントラップ試薬であるDMPOを用いて電子スピン共鳴(ESR)により検討する。DMPOのヒドロキシルラジカル付加体のESR信号は、窒素および水素核の微細結合定数の差異で識別できる。任意の濃度に調製したジェミニ型両親媒性デンドリマーの水溶液を過酸化水素、DMPO、リン酸緩衝溶液に加えて、ESRキャビティー内で紫外線照射を室温で30秒間行い、照射直後のESR信号を定量的に測定する。これより、ジェミニ型両親媒性デンドリマーの構造と活性酸素消去の反応速度定数との相関を調べる。もし時間があるようならば、スーパーオキシドアニオンの活性酸素についても上記と同様にスピントラッピング法によりESRを用いて評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請段階では、超高圧水銀灯500W照射装置 USHIO一式(1,060千円)、薬品・ガラス器具の消耗品(500千円)、国内出張(50千円)を平成23年度に申請していたが、採択された研究費が減額されたため、超高圧水銀灯照射装置を購入することができなかった。国内出張(東京での国際会議World Congress on Oleo Science)は、東日本大震災のため中止となり、使用しなかった。このため、平成23年度は薬品・ガラス器具などの消耗品の購入に研究費を使用しただけで、残りは次年度に繰り越すことになった。 平成24年度は、乳化を調製する際に必要なホモジナイザーと乳化能の評価で使用する光学顕微鏡を購入し、残りは薬品やガラス器具などの消耗品の購入で研究費を使用する計画をたてている。
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Research Products
(7 results)