2011 Fiscal Year Research-status Report
階層横断的自律構造を有する含ホウ素ソフト粒子の合成と機能化開拓
Project/Area Number |
23750167
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西藪 隆平 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (00432865)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 触媒担体 / 金ナノ粒子 / ボロン酸 / 刺激応答性 / 触媒 / 水素化還元 / 低環境負荷 / 分子集合体 |
Research Abstract |
ベンゼン-1,4-ジボロン酸と1,2,4,5-テトラヒドロキシベンゼンとの逐次的なボロン酸エステル結合の形成が,適切な自己組織化条件において,粒径が約900nmの単分散球状微粒子の生成を導くことを見出した。ボロン酸エステル結合の動的共有結合性は当該粒子に興味深い刺激応答性を与えた。すなわち溶液中のpH変化に応答したボロン酸エステルの開裂と再形成が,当該粒子の可逆的な溶解と再形成を導いた。さらに興味深いことに,当該粒子は特定の糖に応答して,球状から繊維状構造への形態変化を起こすことを明らかにした。この選択的な形態変化はボロン酸の糖認識能に基づく構成要素交換反応に起因することがわかった。本結果は分子組織化を利用した刺激応答性材料の作製において新たな方法論を提供するものであり,その成果を国際論文誌 (ChemPlusChem, 77, 201-209 (2012)) にて発表した。上記結果を受け,異なる分子部品を用いることで調製される粒子の構造的多様性を調査した。その結果,ベンゼン-1,4-ジボロン酸とペンタエリスリトールとの組み合わせが複雑な表面形状をもつ花弁状粒子の形成を導くことを見出した。当該粒子の機能開拓の一環として,表面への金ナノ粒子の担持を試み,その触媒活性を検討した。表面析出還元法により粒径が 2.7 ± 0.6 nm の金ナノクラスターが固定化された。当該複合体は4-ニトロスチレンの水素化反応において,金ナノクラスターと担体ホウ素との協働的触媒作用に起因する高選択的かつ高効率なニトロ基の還元が認められた。芳香族アミンは医薬・農薬や工業製品における有用な反応中間体であるため当該触媒は低環境負荷型触媒反応の実現に資するものである。本研究内容について,特許の申請(出願番号:2011-190242)を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究計画における到達目標として,含ホウ素ソフト粒子の機能化を挙げている。今回,高分子担体としての含ホウ素ソフト粒子表面にクラスターサイズの金ナノ粒子を担持することに成功した。4-ニトロスチレンの水素化還元反応において,当該複合体がニトロ基に対して選択的な触媒作用を示すことを見出し,有機高分子担体を用いた金クラスター触媒としては最も高い選択性(99%)と収率(91%)を達成した。このように当該粒子に担体としての優れた機能が見出されたことは,有機高分子を担体とした金ナノクラスター触媒の高度化に資するものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
含ホウ素ソフト粒子表面への金ナノクラスターの担持が金ナノクラスター触媒の高選択・高効率化を導くことが明らかになったので,種々の水素化反応および酸化反応への適用を検討する。具体的にはシンナムアルデヒドの水素化還元反応およびグルコースの酸化反応への適用を,当該複合粒子の再利用性と合わせて検討する。また,水中での触媒反応への適用を考え,アルキル鎖や芳香族置換基を導入した分子部品を新規に合成し,水に溶けない含ホウ素ソフト粒子の調製を行う。さらに,触媒活性の向上のため,より大きな比表面積を持つ含ホウ素ソフト粒子の調製を行う。すなわち,粒子調製時における添加剤の添加や分子部品の変更による粒子のサイズ制御,マイクロエマルジョン法を用いた中空型含ホウ素ソフト粒子の作製などにより,粒子の高比表面積化を行い,粒子表面上への高効率な金クラスターの担持を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ボロン酸分子集合体から成る含ホウ素ソフト粒子の形状制御を目的とした小型膜乳化装置の購入を予定していたが,用いるボロン酸の構造を有機合成化学的に改変することや調製時に用いる溶媒および添加剤の添加により含ホウ素ソフト粒子の形状制御が可能であることがわかったため,その購入を取りやめた。次年度においては,当初の使用計画に基づく研究費の使用に加え,含ホウ素ソフト粒子の形状制御を目的とした新規のボロン酸を合成するために必要な試薬類および溶媒回収装置の購入を行う予定である。
|
Research Products
(11 results)