2011 Fiscal Year Research-status Report
新規界面活性剤を用いた超音波分子イメージング用分子標的ナノバブル造影剤の開発
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23750168
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
土屋 好司 東京理科大学, 理学部, 助教 (50398822)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノバブル / 超音波診断 / 分子認識 / シクロアミロース修飾界面活性剤 / ジェミニ型界面活性剤 / リン脂質 |
Research Abstract |
本研究目的である超音波イメージング用分子標的ナノバブル造影剤を開発するためには、(1)気泡を微小化(ナノバブル化)し、(2)リガンド分子を気泡に標識する必要がある。また、生体環境下においても安定な気泡を調製することが必要不可欠である。そこで、本年度(研究1年目)は(1)気泡の微小化を主たる研究目的とし、"生体環境下"においても分散安定性の高い「ナノバブル」の創製を試みた。新規界面活性剤であるシクロアミロース修飾界面活性剤(CA-LA)及びタウリン誘導重合性ジェミニ型陰イオン界面活性剤(PA12-2-12)にアニオン性リン脂質であるDPPSを混合させたCA-LA/DPPSおよびPA12-2-12/DPPS混合分散剤を用いて微小気泡の調製を行ったところ、水中においては微小かつ分散安定性の高いナノバブルが調製できることが分かった。しかしながら、生体環境下に近いリン酸緩衝液(PBS)中および血清(ウシ胎児血清,FBS)中では時間経過に伴い粒子径が増大したことから、分散安定性に乏しいことが分かった。ゼータ電位測定を行ったところ、PBSおよびFBS中では、過剰な電解質や蛋白質などにより気泡界面の電荷が遮蔽され、気泡同士の凝集が促進してしまうことが分かった。そこで、気泡の凝集を抑制するために、PEG化リン脂質(DPPE-PEG)を混合して微小気泡を調製した。その結果、PBSおよびFBS中においても微小気泡のサイズおよび数は時間経過に対してほぼ一定となった。これは、PBSおよびFBS中の過剰な電解質や蛋白質によって気泡の表面電位が遮蔽されても、PEG鎖の立体斥力(水和斥力)により気泡同士の凝集が抑制されたためと考えられる。以上より、PEG化リン脂質を混合することで、生体環境下においても分散安定性の高いナノバブルの調製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(研究1年目)は、超音波イメージング用分子標的ナノバブル造影剤の開発に向けて、生体環境下においても分散安定なナノバブルの調製を目的として研究を開始した。その結果、新規界面活性剤であるシクロアミロース修飾界面活性剤および重合性ジェミニ型陰イオン界面活性剤にPEG付加リン脂質を添加した混合分散剤を用いることで血清中においても分散安定なナノバブルの調製に成功したことから、現在までの目的はおおむね達成したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに新規界面活性剤にPEG化リン脂質を混合させることで、生体環境下においても微小で分散安定性の高いナノバブルの調製に成功した。そこで、腫瘍特異的に集積可能な超音波造影ナノバブルの調製と腫瘍細胞への集積性について検討していく。具体的には、正常細胞と比較して癌細胞において過剰発現することが知られている葉酸レセプターをターゲットとし、リガンド分子として葉酸を標識した超音波造影ナノバブルの調製を行っていく。また、研究協力者である東京慈恵会医科大学・大川教授の研究グループが開発した抗体をリガンド分子として用いたナノバブルの調製についても検討していく予定である。PEG化リン脂質末端には蛍光色素を標識することもできるので、腫瘍組織への集積性について、超音波診断による評価に加えて、蛍光観察による評価も併せて行い、腫瘍組織への特異的集積性について評価・検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬(リン脂質、界面活性剤、リガンド分子等)、細胞、培地、ガラス器具(合成、試薬調製用)、培養用ディッシュ等の消耗品が主要な研究費用途となる。特に次年度はリガンド分子標識と癌細胞への集積性について検討するため、リン脂質、蛍光蛋白質、抗体、細胞等の比較的高額な消耗品を購入する必要がある。また、これまでの研究で、生体環境下においても安定なナノバブルの調製に成功したため、その研究成果について学会発表および学術論文への投稿を予定しており、学会発表に伴う旅費や論文投稿に必要な経費についても併せて計上させていただいた。
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