2011 Fiscal Year Research-status Report
外部刺激による柔軟ならせん液晶分子の可逆的集合形態制御
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23750170
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
梶谷 孝 独立行政法人理化学研究所, エネルギー変換研究チーム, 副チームリーダー (20469927)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 液晶 / らせん / 刺激応答 / 相転移 / 伸縮 / 表面 |
Research Abstract |
本研究は、分子の立体構造と極性官能基を利用した独自の分子設計戦略に基づき、高密度に集積化した分子への外部刺激印加によるダイナミックな分子運動を誘起し、その協同作用を利用した分子構造変化がもたらす、可逆的な液晶相転移の達成を目的とする。これまで申請者のグループでは、溶液中、酸化還元過程において、らせん骨格を有するオルトフェニレン分子のらせんピッチが伸縮することを見出した。この研究成果は機能性有機材料の新たな設計指針をもたらすと期待される。そこで本研究では、液晶状態において可逆的に構造変化するらせん分子の創成を試みる。特に、液晶のもつ自己組織化能に着目し、分子の微視的な運動の巨視的なスケールへの増幅による、"分子集合構造の自在な制御"の達成を目指す。23年度は、目的とする柔軟な刺激応答分子であるらせん分子のデザインを試みた。ここで、らせんの伸縮に伴う液晶相転移がキーポイントであることから、まずらせん構造を安定に保持した分子が液晶相を形成しなければならない。そこで、本研究では動的らせん分子としてオルトフェニレン誘導体に着目した。分子末端へアルキル鎖を導入したオリゴオルトフェニレン誘導体の熱的挙動と分子集合状態等の基礎物性を、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量(DSC)測定、SPring-8の放射光を用いたX線回折測定により検討しところ、長鎖アルキルを導入したらせん分子が液晶相を発現することを見出した。次に、外部刺激応答性の検討に先駆けて、構造類似の円盤状液晶化合物を合成し、その集合構造と刺激応答特性を検討したところ、異方的な電荷輸送特性を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究の中で、嵩高いらせん分子が液晶性を発現するという、これまでの常識とは異なる発見がもたらされ、その液晶分子が異方的機能発現を実現する可能性をもつことを明らかにした。さらに、これらの成果は可逆的かつ異方的分子運動制御を可能にするための重要な知見であるといえる。これは、今後予定している外部刺激による柔軟ならせん液晶分子の可逆的な集合形態制御への大きなアドバンテージであり、当初の計画を上回る進捗状況であるといえる。さらに、この研究成果を学会発表し、外部からも高い評価を得た。また、電場応答特性の検討に必要な測定システムを構築し、測定条件の検討を行ったことも、今後の研究展開に有用であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、合成した柔軟ならせん液晶分子のバルク中における電場応答特性を検討する。液晶材料の電場応答特性は、サンプルを2枚のITO電極基板ではさみ、三角波や交流波を印加して、分子の応答挙動を偏光顕微鏡観察とX線回折(散乱)測定で検証する。さらなる発展研究として、修飾基板の上に機能性分子団を乗せた状態での機能発現、誘起、増幅を試みる。本研究ではフィルムやシートを容易に形成できるらせんポリマーが適している。本手法により、電場印加による基板の膜厚制御や、表面配向特性と表面極性の差異をもたらすことが期待される。以上を通じて、自在な制御が可能な"分子集積化のための場"の創製を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各種測定に必要なサンプルを秤量するための天秤と、微小角入射X線構造解析による表面状態の検討に要するゴニオステージシステムを購入する。
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Research Products
(9 results)