2012 Fiscal Year Annual Research Report
酵素と有機触媒を組み合わせた環境調和型反応系の開発
Project/Area Number |
23750171
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤川 賢吾 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (60548733)
|
Keywords | ペプチド触媒 / 有機触媒 / ラッカーゼ / 酸化酵素 / 不斉酸化反応 / 連続反応 |
Research Abstract |
本研究では,水中で機能するペプチド触媒を開発し,酵素とともに同一系内で用いることで新規な共触媒反応系を構築することを目的とした。初めに,水中において高効率・高選択的に反応を進行させるペプチド触媒を見出すために配列検討を行った。この過程でペプチドの二次構造と触媒能の相関について調べ,ヘリックスやターンなどのペプチド高次構造の形成が高い触媒能を発揮する鍵であることを示した。そのようなペプチド触媒を用いると既存の小分子の触媒では達成できないような反応が行えることを見出し,不斉四級炭素中心の構築反応や位置選択的な不斉還元反応に成功した。 次に,酸化酵素であるラッカーゼとペプチド触媒を水中で共存させて用いる新たな反応系の開発を行った。アルデヒドを基質として用い,ペプチドによる活性化と酵素による空気酸化を組み合わせて不斉α-酸化反応を行うことに成功した。この反応系では飽和アルデヒドからエナンチオ選択的にα-オキシアルデヒドが得られるが,界面活性剤を添加して反応を行うだけでα-オキシカルボン酸が生成することも見出した。また,このような酸化反応はペプチドを触媒とした他の反応と組み合わせて連続的に行うことができ,ペプチド触媒によるα,β-不飽和アルデヒドへの求核剤付加と,ペプチド触媒/酵素によるα位酸化をワンポットで行うことが可能であった。 通常では金属試薬を用いる必要があった酸化反応に対し,ペプチド触媒と酵素を組み合わせることによって効率的な空気酸化が可能となり,また本触媒系独自の変換反応も達成できた。生体内では複数の酵素が共存して連続的に反応を行っているが,本研究で人工のペプチド触媒を用いて酵素との共触媒反応,あるいは連続反応を開発したことは理想的な有機合成法の確立に向けた取り組みとして意義深い。
|
Research Products
(6 results)