2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23750179
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇井 美穂子 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30549580)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光応答性蛋白質 / 自己集合蛋白質 / PYP / alpha-hemolysin / 光制御 |
Research Abstract |
本研究では、物質の細胞膜透過の光制御を可能とするバイオツール開発を目指し、孔形成蛋白質毒素alpha-hemolysin(Hla)のN末端に光受容体蛋白質photoactive yellow protein (PYP)を融合した新規光応答性機能分子N-PYP-Hlaを構築した。大腸菌発現系により大量調製したところ、N-PYP-Hlaは野生型Hlaと同様に水溶液中では単量体、6.25 mMデオキシコール酸Na存在下では7量体を形成することが確認できた。また、可視光照射下での吸収スペクトルを測定したところ、PYPに由来する446 nm付近の吸光度は低下し、光反応サイクル中で生じる中間体に由来する350 nm付近の吸光度が上昇していたことから、N-PYP-Hlaは野生型PYPと同様に光反応サイクルを持つと推察された。これらのことから、N-PYP-Hlaは、Hla部位およびPYP部位ともに野生型の機能を保持していることが示唆された。N-PYP-Hlaの溶血活性について25 °Cで比較したところ、450 nmの可視光照射下で羊赤血球に対する溶血活性の低下が認められた。一方、未修飾N-PYP-Hlaでは、光照射の有無による溶血活性の差はほとんど認められなかった。したがって、HlaにPYPを融合することにより機能発現の光応答性付与することができたと考えられる。溶血の光応答性の分子機構に関しては、変異体を用いた溶血過程の段階的な解析により、光反応中のPYP部位がHla部位の孔形成過程あるいは孔形成後の物質透過を阻害している可能性が示唆された。N-PYP-Hlaは、細胞膜透過性の人為的制御を可能とする機能分子としての重要性のほか、光応答性モジュールとして機能するPYPの応用例としても意義深く、さらなる光応答機構の詳細な解析とPYPの分子デザインによってPYPの汎用性向上が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度までに光応答性機能分子N-PYP-Hlaを大量調製し、その機能評価系を構築することができた。また、変異体作製および段階的な溶血活性評価により光応答メカニズムについての詳細を解明しつつある。しかし、今年度に予定していたX線結晶構造解析による立体構造の解明には未だ至っておらず、PYPによる光制御機構の完全理解と自己集合蛋白質に対する一般的光制御法の確立には達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、N-PYP-Hlaの立体構造解明による光応答機構の完全理解を目指すとともに、N-PYP-Hlaの光応答性のさらなる向上および種々の自己集合蛋白質への効率的な光応答性付与を目指し、遺伝子工学的手法のみならず、任意部位への化学的修飾法を利用したPYPの導入についてもあわせて検討を行う予定である。化学修飾には、クリック反応を用いることを予定しており、まずPYPへの非天然アミノ酸導入を目指す。これにより、光応答性モジュールとしてのPYPは蛋白質以外の分子への修飾も可能となり、さらに応用性が高まると期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)