2012 Fiscal Year Research-status Report
自己複製超分子を指向した金属錯体型人工DNAのPCR様増幅サイクルの構築
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23750181
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹澤 悠典 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70508598)
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Keywords | 人工DNA / 金属錯体型塩基対 / 自己複製 / 超分子化学 |
Research Abstract |
本研究では、金属配位部位を核酸塩基として有する人工DNAオリゴマーを鋳型として、配位子型ヌクレオシドの縮合反応をおこない、金属錯体型人工DNA鎖の複製系を構築することを目的としている。金属錯体型塩基対を形成するヌクレオシドとして、Cu2+イオンと安定な平面四配位型錯体を形成するヒドロキシピリドン型ヌクレオシド(H)を選択し、5’-モノリン酸体(dHMP)を用いた縮合反応、および5’-トリリン酸体(dHTP)を用いた酵素反応をおこない、鋳型鎖DNA上での一塩基伸長反応を検討した。 本年度は当初の実験計画に加え、金属錯体型人工DNAの酵素反応の検討を開始した。まず、酵素反応の基質となるヒドロキシピリドン型ヌクレオシドの5’-トリリン酸(dHTP)の合成をおこなった。種々の合成法および保護基の検討の結果、ヒドロキシピリドンの3位水酸基およびリボース部位の3’位水酸基をベンゾイル基で保護したヌクレオシドを出発物質として、定法の一つであるEckstein法により、低収率ながらも目的のdHTPを得ることができた。1H NMR, 31P NMR, 13C NMRおよびエレクトロスプレーイオン化質量分析より同定した。 続いて、酵素による複製系の構築を目指し、鋳型鎖に会合させたプライマーDNAへのdHTPの一塩基伸長反応を検討した。クレノウフラグメントを用いた反応の結果、鋳型鎖上のヒドロキシピリドン塩基(H)に対して、dHTPが低効率ながらも取り込まれることを見出した。さらにCu2+イオン存在下では、金属錯体型塩基対H-Cu2+-Hの形成により取り込み効率が上昇することを期待したが、dHTPの取り込みは見られなかった。現在、酵素や金属イオンの種類などの条件を変え、Hに対するdHTPの取り込み反応の詳細な検討をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属錯体型人工DNAの複製サイクルの構築を目指し、本年度は特に酵素を用いた縮合反応を中心に研究を遂行した。(1) 酵素反応の基質となるヒドロキシピリドン型ヌクレオシドの5’-トリリン酸体(dHTP)の合成、(2) プライマー伸長反応によるdHTPの酵素による取り込みの評価をおこなった。 (1) dHTPの合成については、収率が低いながらも達成することができた。合成法および精製法の改良は必要であるが、酵素反応の検討に必要な量を得ることができた。 (2) dHTPの酵素によるとり込み反応の検討の結果、鋳型鎖上のヒドロキシピリドン塩基(H)に対してdHTPが取り込まれることを見出した。 以上のように、当初の研究計画に加え、金属錯体型人工DNAの酵素反応の検討を開始し、酵素反応の基質となるトリリン酸の合成、および酵素による一塩基伸長反応の検討をおこなった。合成収率や酵素反応効率が低いなどの課題はあるが、新たに酵素による人工DNAの合成の可能性を見出すに至り、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒドロキシピリドン型ヌクレオシドトリリン酸(dHTP)の合成に成功したため、当初の計画に加えて、鋳型DNA鎖上での酵素によるプライマー伸長反応にも注力することとし、研究費の一部を次年度に使用する計画である。また、鋳型鎖上でのヌクレオシドの会合構造を評価するために、X線結晶構造解析等による金属錯体型塩基対の配位構造解析をはじめ、構造評価にも力を入れる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、鋳型人工DNA鎖およびモノマーであるヒドロキシピリドン型ヌクレオシドモノリン酸・トリリン酸の大量合成が必要である。そのため本年度と同様、各種合成試薬・器具に加え、純正DNA合成試薬や精製カラムを購入する。さらに酵素による縮合反応を詳細に検討するために、分子生物学用の実験器具を揃える予定である。
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Research Products
(8 results)