2013 Fiscal Year Research-status Report
自己複製超分子を指向した金属錯体型人工DNAのPCR様増幅サイクルの構築
Project/Area Number |
23750181
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹澤 悠典 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70508598)
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Keywords | 人工DNA / 金属錯体型塩基対 / 自己複製 / 超分子化学 / 酵素合成 |
Research Abstract |
本研究では、金属配位子を核酸塩基部位として有する人工DNAオリゴマーを鋳型として、配位子型人工ヌクレオシドの縮合反応をおこない、人工DNA鎖の複製系を構築することを目指している。Cu2+イオン存在下で2:1錯体を形成し安定な金属錯体型塩基対を形成する「ヒドロキシピリドン型人工ヌクレオシド(H)」を用い、昨年度に引き続き、主に酵素を用いた縮合反応を検討した。 まず基質となる5'-トリリン酸体の合成に関して、昨年に引き続き検討を重ね、イオン交換カラムクロマトグラフィー等による精製操作の改善をおこなった。この結果、種々の検討に必要な十分量のトリリン酸体を得ることができた。 酵素反応に関しては、通常のDNAポリメラーゼに加え、新たに鋳型非依存性DNA合成酵素であるターミナルトランスフェラーゼ(TdT)を用いたプライマー伸長反応をおこなった。生成物を変性ポリアクリルアミド電気泳動により解析したところ、TdTによりヒドロキシピリドン型ヌクレオシド(H)が複数縮合したことが確認された。 以上の結果から、TdTによるdHTPの連続的な取り込みにより、ヒドロキシピリドン配位子(H)を複数含む人工DNAの合成、特に長鎖オリゴマーの合成が可能であることが示唆された。昨年度に見出した鋳型鎖上でのプライマー伸長反応と合わせて、人工DNA鎖の複製系に用いられると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属錯体型人工DNAの複製サイクルの構築を目指し、昨年度に引き続き酵素を用いた縮合反応を中心に検討をおこなった。その結果、 (1) 酵素反応の基質となるヒドロキシピリドン型ヌクレオシド5'-トリリン酸(dHTP)の精製法の改善により、酵素反応の検討に必要な十分量のdHTPを得ることができた。 (2) 新たに鋳型非依存性DNA合成酵素であるターミナルトランスフェラーゼ(TdT)を用いた検討をおこなった結果、複数個のヒドロキシピリドン型ヌクレオシド(H)の縮合に成功した。 の成果が得られた。特に酵素による人工DNAの合成は反応効率および選択性が高いと期待されるため、本研究が目指す分子増幅サイクルの構築を大きく進展させる可能性があると考えている。そこで当初の研究計画に加え、酵素反応の効率・収率の最適化および反応解析をおこなう必要があると判断した。それに伴い補助事業期間を延長したが、研究目標に関する知見は着実に得られており、おおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を遂行する課程で、ターミナルトランスフェラーゼ等の酵素による金属錯体型人工DNAの合成の可能性を見出した。酵素反応による人工分子の自己複製へと展開できる結果であるため、研究計画を発展的に変更し、酵素を用いた人工DNAの合成と複製サイクルへの応用の検討を開始する。鋳型非依存型酵素による人工DNA合成、および昨年度に見出した鋳型DNA鎖上でのプライマー伸長反応の解析および最適化に力を入れる。当初予定していた酵素を用いない人工DNAの縮合系に関しても、実験系を変更して反応解析を進める計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、金属錯体型人工DNAの複製サイクルの構築を目指し、人工ヌクレオシド誘導体の合成および縮合反応を行った。新たに鋳型非依存型ポリメラーゼを用いた縮合反応を試みたところ、予想に反して人工DNAの酵素合成の可能性を見出すに至った。酵素反応は収率や選択性が高いと期待され、特に長鎖人工DNAオリゴマーの合成・複製に利用できると考えた。そこで、予定を発展的に変更し、酵素反応の詳細な条件検討に注力した。そのため、反応速度論解析や複製サイクル構築に必要な実験機器および試薬等の購入を行わなかった。 本研究を遂行する課程で、新たに酵素による金属錯体型人工DNAの合成の可能性を見出した。そこで、研究予定を変更し、酵素を用いた人工DNAの合成を複製サイクルへの応用の検討を開始する。次年度は、引き続き人工ヌクレオシド誘導体や人工DNAの合成に必要な有機合成試薬・器具に加え、酵素反応解析・反応機構解析に必要な実験器具および酵素・試薬類の購入を予定している。
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Research Products
(8 results)