2011 Fiscal Year Research-status Report
ポリチオフェンナノ粒子-蛋白質複合体の創製とその利用
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23750187
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
水野 稔久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90345950)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 共役性高分子 / 蛋白質 |
Research Abstract |
ポリチオフェン誘導体を可溶化可能な蛋白質の設計と、その結果生成されるポリチフェン/蛋白質複合体のキャラクタリゼーションを行った。蛋白質の設計は、天然で5本鎖コイルドコイル構造を形成する事が知られるCartilage Oligomeric Matrix Protein (COMP)の37-64残基目のアミノ酸配列を抜き出し、これを5本タンデムに繋ぎ、ひとつづきにすることで行った(COMP-m)。また、この蛋白質のC-末端側に正電荷を過剰に加えたCOMP-H、負電荷を加えたCOMP-Dも同時に準備した。ポリチオフェン誘導体の中でも、ポーラロン状態にて導電性が得られる事が知られるPEDOTの可溶化を目指し、PEDOTのモノマーとなるEDOTをCOMP-m、COMP-H、COMP-D共存下で酸化重合を行った。その結果、COMP-H、COMP-D存在下で酸化重合を行った場合にのみ、PEDOTの可溶化が見られ、還元型PEDOTに特徴的な濃紫色の着色が上清に見られた。次に、どのような状態で蛋白質にPEDOTが可溶化されているかキャラクタリゼーションを行うため、透過型電子顕微鏡により観察を行った。その結果、PEDOT部位が15-20 nm程度でナノ粒子化し、蛋白質と複合化されている事が確認された。一方で、マイカ上にこのPEDOT/蛋白質複合体を吸着させ、液中AFM測定により複合体全体の構造を評価した結果、こちらは20-25 nm程度のナノ粒子が観測されたことから、PEDOT/蛋白質複合体の構造は、中心におもに15-20 nm程度でPEDOTが凝集したナノ粒子が形成し、その周辺を数nmの厚みで蛋白質がコートした構造である事が推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初今年度の研究目標に掲げていた、ポリチオフェン誘導体を可溶化可能な蛋白質の設計と、その結果生成されるポリチフェン/蛋白質複合体のキャラクタリゼーションを共に達成できた事から、順調に研究計画は進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度までに構築に成功した『PEDOT-蛋白質複合体』は、蛍光色素類を表面修飾した際に、PEDOTの酸化状態の変化により蛍光色素の蛍光発色強度をOn-Offできることが期待できる。これは、周辺環境の酸化還元状態を読み取る事が可能な、新規レドックスプローブの開発に繋がると期待される。そこでH24年度では、『PEDOT-蛋白質複合体』への様々な蛍光色素の修飾を行い、酸化還元に応答した蛍光発色挙動の評価を行う。一方で、H23年度の当初目的の一つであった、PEDOT-蛋白質複合体の電気化学的、分光化学的な性質に影響を与えると思われる、複合体の粒子径の調節を可能とする、蛋白質変異体の取得には至っていなかった。そこで、H24年度にこの実行に予定していた研究予算を利用し、複合体の粒子径の制御が可能な変異体の取得も目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PEDOTを可溶化可能な蛋白質の取得には、大腸菌発現系での蛋白質合成を利用するため、発現ベクター作製のために遺伝子操作が可能な試薬、酵素類が必要となる、また、大腸菌内で合成後の目的蛋白質の単離精製には、アフィニティーカラム類が必要である。一方、蛋白質へ修飾する蛍光色素類や、酸化還元応答を評価するための表面修飾電極を作製するために金電極や自己組織化単分子膜作製試薬が必要である。これらを、消耗品として研究費の計上を行いたい。また、研究成果の学会発表のための旅費と、論文発表を行った後の論文別刷の購入代金も計上したい。
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Research Products
(3 results)