2011 Fiscal Year Research-status Report
高次有機ナノ構造制御を指向した次世代有機ELデバイス材料の創製と機能発現
Project/Area Number |
23750204
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
笹部 久宏 山形大学, 理工学研究科, 助教 (10570731)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 有機EL / 電子輸送材料 |
Research Abstract |
本研究では高次有機ナノ構造制御を指向した次世代有機ELデバイス材料の創製と機能発現を目的としている。ピリジンの弱い分子間CH/N水素結合を駆動力として材料分子が自発的に精密かつ強固な高次有機ナノ構造を形成することを利用して、有機ELデバイスに用いられる固体薄膜の電荷移動度と耐久性の向上を目指している。初年度である本年は、ビフェニルを中心骨格としたピリジンの置換位置の異なる一連の電子輸送材料の合成とそれらの特性評価を行った。光学特性、熱物性、青色リン光デバイスの評価を行った結果、材料の化学構造と物性、デバイスにおけるキャリア輸送・注入特性の相関関係を見出した。すなわち、ピリジンの窒素位置が2=>3=>4となるにつれて、熱特性が向上するだけでなく、イオン化ポテンシャルが深くなり、電子注入性と輸送性に優れることが明らかになった。青色リン光素子は最大で100cd/m2で35lm/Wの電力効率を示した。合成した窒素の置換位置が異なる材料を十分時間をかけて繰り返し昇華精製したところ、ピリジンの窒素位置が4位、3位の誘導体の単結晶を得ることができた。単結晶X線構造解析を行ったところ、ピリジンの弱い水素結合に基づく分子間CH/N水素結合の存在を明らかにすることに成功した。また、申請者が過去に開発した材料の単結晶X線結晶構造解析にも成功し、同様にCH/Nの弱い分子間水素結合の存在を明らかにすることができた。申請者は、弱いCH/N分子間水素結合に基づく有機固体薄膜中での分子配向制御を提唱しているが、これはその直接証拠となる結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、(1)3,5-ジピリジルフェニル部位を有する新規電子輸送材料群の開発、(2)リン光有機EL素子材料に必須の機能を損なうことなく、非晶質薄膜と分子間水素結合能の保有を両立する中心骨格の探索を行うの2点であった。初年度には、ビフェニルを中心骨格とする3つの材料を開発し、量子化学計算⇔材料合成⇔固体薄膜物性評価⇔デバイス特性評価の4つの相関関係を明らかとした。これまでに申請者らは、分光エリプソメトリーによる非晶質膜内の分子配向を検証した結果、窒素位置によって分子の配向性が大きく異なることを見出し、機能発現の起源が、ピリジンの弱い CH/N 分子間水素結合を駆動力とした分子配向であることを提唱していた。しかしながら、直接証拠を手にしてはいなかった。今回、合成した誘導体の単結晶作製に成功し、X線結晶構造解析を行った。その結果、結晶中で実際に CH/N の弱い水素結合が見られ、その距離が2.5-3.8オングストロームであることを明らかにした。数種ではあるが、結晶構造が明らかになったことから、分子内の窒素位置を精密設計することで固体薄膜中の分子の配列を精密設計できるようになりつつあり、研究は概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、引き続き、新規材料の開発を行うとともに、開発した材料を用いて高性能有機ELデバイスの創製、キャリア移動度測定、分子間水素結合の実証を行う。有機ELデバイス効率とキャリア移動度を最大にするピリジン窒素の置換位置や中心骨格を丁寧に検討・探索すると共に、引き続き、単結晶X線構造解析による分子間相互作用の検証を行い、高次構造制御に必要な知見を得る。今年度は、(1) 有機ELデバイス作製・特性評価、寿命評価、(2) TOFを用いた電荷移動度測定、(3) 単結晶X線結晶構造解析を中心に検証を行う計画である。キャリア移動度解析、単結晶X線構造解析には、新規材料のみならず、これまでに開発してきた材料も検討項目に入れ、分子構造と発現機能の関係を多角的に検証する。新たな材料ができ次第、可能な項目を随時検証して柔軟に研究を進めていき、得られた成果を取りまとめ、成果の発表を適時行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、新規材料開発に必要な薬品類等の購入、研究成果発表のための旅費、論文発表にかかる経費、研究遂行に必要な書籍類などに用いる予定である。特に多くの予算を有機合成用試薬、ガラス器具、有機ELデバイス作製用の消耗品費に計上する。有機合成用試薬では、有機半導体材料の原料と合成反応に用いる有機金属触媒が必須である上、デバイスと移動度測定を行うには、グラム単位の大量合成が必要になる。本研究では真空蒸着型素子をターゲットにしているが、デバイス作製に必要な電極金属、フィラメント、ルツボ等も必要不可欠である。また、国内外で成果発表を行うために、旅費、滞在費、参加費に使用する。必ず海外発表を行ない、研究成果の世界への発信と発表スキルを身につける。論文発表を多数行う予定であり、作成時に必要なソフト、英文校閲費、別刷代を計上する。また、研究を迅速かつ効率的に遂行するための資料・書籍費の予算を多く計上し、研究室の研究用参考書籍及び資料の充実を図りたいと考えている。
|
Research Products
(41 results)
-
[Journal Article] Optimizing the Charge Balance of Fluorescent Organic Light-Emitting Devices to Achieve High External Quantum Efficiency Beyond the Conventional Upper LimitY.-J. Pu, G. Nakata, F. Sato, H. Sasabe, D. Yokoyama, J. Kido2012
Author(s)
Y.-J. Pu, G. Nakata, F. Sato, H. Sasabe, D. Yokoyama, J. Kido
-
Journal Title
Adv. Mater.
Volume: 24
Pages: 1765-1770
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] 9,10-Bis(bipyridyl, pyridylphenyl, phenylpyridyl, and biphenyl)anthracenes combining high electron-transport and injection, efficiency, and stability in fluorescent organic light emitting devices2011
Author(s)
J.-J. Oh, Y.-J. Pu, H. Sasabe, K. Nakayama, J. Kido
-
Journal Title
Chem. Lett.
Volume: 40
Pages: 1092-1094
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-