2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23750220
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松田 真生 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80376649)
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Keywords | スピン転移 / スピンクロスオーバー錯体 / 電界発光 / 有機薄膜素子 |
Research Abstract |
Chlorophyll aを発光分子とする有機電界発光素子に、スピンクロスオーバー錯体である[Fe(dpp)2](BF4)2を導入すると、低温でのスピン転移に伴い電界発光が消失する。この新規現象の機構解明のため、ITOと活性層の間に電子ブロック層として働くことが期待できるPVK(poly-(N-vinylcarbazole))を導入したITO/PVK/[Fe(dpp)2](BF4)2:Chl a/Al構造の素子、Chl aの代わりにNile Redを発光分子として導入した素子などの複数の素子を作製し、電界発光特性の温度依存性測定を行った。結果として、ITO/[Fe(dpp)2](BF4)2:Chl a/Al構造の素子におけるスピン転移に伴う電界発光の消失は、スピン転移による分子軌道準位の変化が発光分子への電子注入を阻害することによって引き起こされるものであることを明らかにした。このような機構による有機薄膜素子の特性変調は他に報告がない。分子軌道エネルギーの変化や、キャリア輸送特性の変化を利用した有機薄膜素子の特性制御はまったく未知の現象であり、その機構解明は化学・応用物理学的に意義が高い。本研究成果を基に新たな素子特性変調機構が確立されれば、基礎科学・応用科学の両面においてのブレークスルーとなり得るだろう。スピンクロスオーバー化合物の素子利用という点についても新しい観点を提供する研究成果が得られたと言える。
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Research Products
(3 results)