2011 Fiscal Year Research-status Report
新規エネルギ-貯蔵デバイス用溶媒としての有機フッ素化合物の特性
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23750221
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
南部 典稔 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (40329214)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有機フッ素化合物 |
Research Abstract |
本研究では、リチウム電池用の溶媒として有機フッ素化合物を使用するための基盤となる各種特性評価を行うことを目的とする。フッ素原子の導入個数および基本構造の違いが有機フッ素化合物の物理的性質、化学的性質、有機フッ素化合物を溶媒とする電解質溶液の特性および電池の特性にどのように影響するのかを系統的に検討する。フッ素は、電気陰性度が最大、水素に次いで立体的に小さい、イオン化エネルギ-が高い、C-F間の結合エンタルピ-が高い、C-F結合の分極率が比較的小さい等の特異的な性質を有する。部分的にフッ素化された有機化合物の分子間には強い相互作用が働き、これらの有機フッ素化合物は種々の特性に対して強い「極性効果」を及ぼす。有機フッ素化合物には、酸素の溶解性が高い、耐酸化性に優れる、水との混和性が低い、液体使用温度範囲が広い等の特徴を有するものが多い。 平成23年度は、フッ素原子の導入個数(1, 3)および基本構造の異なる有機フッ素化合物を合成し、分別蒸留により精製した。有機フッ素化合物の基本構造として、比較的単純な構造を有し、かつ汎用的な鎖状エ-テルおよび鎖状炭酸エステルを選んだ。 含フッ素p-トルエンスルホン酸エチルと2-メトキシエトキシエタノ-ルとの反応により、1-エトキシ-2-(2-メトキシエトキシエタン)(EMEE)のエトキシ基の末端にある炭素原子にフッ素原子が1個または3個結合した、1-(2-フルオロエトキシ)-2-(2-メトキシエトキシ)エタン (FEMEE)、1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2-(2-メトキシエトキシ)エタン (TFEMEE)を合成した。また、フルオロアルコ-ルとクロロ炭酸エチルとの反応により、エチル基の末端にある炭素原子にフッ素原子が1個または3個結合した炭酸ジエチル誘導体も合成した。これらの化合物の純度は99%以上である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フッ素原子の導入個数および基本構造の異なる有機フッ素化合物を合成し、精製する方法を確立することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
有機フッ素化合物の溶媒および電解質溶液としての特性を評価する。さらに、酸素の電気化学的挙動を解析する。 有機フッ素化合物の比誘電率、粘性率、密度、屈折率の温度変化を測定する。さらに、有機フッ素化合物のドナ-数、アクセプタ-数をNMRにより間接的に求める。有機フッ素化合物を溶媒とする溶液を調製し、導電率の温度変化を測定する。 酸素雰囲気下、有機フッ素化合物を溶媒とする溶液中でサイクリックボルタモグラムを測定し、酸素の電極反応の可逆性を検討する。電解質には、テトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム化合物を使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
合成用試薬等の消耗品について、計画時よりも安く購入でき、残額が生じた。測定に使用する装置が故障したため、次年度の研究費の一部をその修理費に充てることを検討している。 残りの研究費は、溶液特性評価および電気化学測定に使用する電解質、比較溶媒などの消耗品の購入費用、学会出張旅費、論文投稿費用、論文別刷費用等に充てる予定である。
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