2011 Fiscal Year Research-status Report
特異なパイ共役分子を基盤とする高効率有機薄膜太陽電池の開発
Project/Area Number |
23750223
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
安藤 伸治 独立行政法人理化学研究所, エネルギー変換研究チーム, 基幹研究所研究員 (10525348)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 太陽電池 / 自己組織化 / 超分子化学 / 分子性固体 / 有機化学 |
Research Abstract |
本研究では、電子ドナー性およびアクセプター性機能団の集積構造を分子レベルでデザインし、高性能な光電変換材料の創製を目指している。その一環として、電子供与体であるジメトキシベンゼンをオルト位で急角度に複数連結したオルトフェニレン(OP)分子を構築し、そのコンホメーション解析を詳細に行った。その結果、このOP類は、末端に適切な官能基を有する場合のみ、疎溶媒効果によって、自己組織化が進行し、複数のパイ電子を高密度に含有する剛直なナノスケール状のラセン構造を形成することを見出した。この特異な高次構造体の動的特性は、主鎖を構成する芳香環のユニット数が増大するに連れて劇的に安定化し、右巻きおよび左巻きのラセン分子へと光学分割することも可能である。このような構造化および動的特性とリンクして、高次OP類は、これまでのパイ共役系化合物には見られないような光・電気化学特性を示し、非常に有効共役長の短いスルーボンド型のパイ共役系を有すると共に、強固な分子内相互作用に基づくエキシマ発光や、多段階かつ複数の可逆な酸化還元挙動を呈することを明らかにした。さらに、この剛直かつ電子活性な集積構造体の光伝導特性を評価したところ、分子の鎖長が長くなるに連れて光伝導度は飛躍的に向上し、高次OP分子においては、1.40 cm2/Vsというアモルファスシリコンに匹敵する非常に高いキャリア移動度が達成され、新しい有機半導体の構造モチーフを提示した。以上の研究に加え、新奇なヘテロ環構造を有する平面電子アクセプターとして、縮環チアゾールとキノン骨格をハイブリットした新しいビルディングブロックを構築し、これら分子の基礎物性の評価と高分子化の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目的であった特異な電子供与体および電子受容体群の構築は順調に進んでおり、それら分子のコンホメーション解析や基礎物性の検討を終えている。特に、3次元構造を有する電子ドナー性のオルトフェニレン分子は、自己集積化と関連して、非常に特異的な光・電子物性や優れた電荷輸送特性が達成されている。よって、分子の立体構造と分子間相互作用を協奏的に利用した戦略に基づき、高効率な光-電気エネルギー変換を実現する新規な有機半導体材料の創製が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に合成した電子ドナーおよび電子アクセプター分子群の電荷キャリア輸送特性および光電変換特性を検討する。固体材料中におけるキャリア移動度は、レーザーフラッシュフォトリシス時間分解マイクロ波電動度測定法およびTime Of Flight法を用いて評価する。さらに、これら分子群を活性層に用いた有機薄膜太陽電池を作製し、その評価を行う。また構築したビルディングブロックは、デバイス作製により有用な高分子化のためのアプローチを検討する。上記の物性評価で得られた結果は、随時分子設計にフィードバックし、コンポーネント分子の最適化を施しながら特性向上を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に合成した化合物の誘導化をするために、ガラス器具・試薬・有機金属試薬・重水素化溶媒等の購入に利用する。また物性評価は現有設備や理化学研究所内の共通利用器機を最大限使用して行うが、いくつかの特殊測定は他の機関の研究者との共同研究にて遂行するための国内旅費としても利用する。
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