2011 Fiscal Year Research-status Report
液晶の自己組織化を利用した省エネルギー有機半導体薄膜製造技術の開発
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23750224
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 貴広 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究員 (70392678)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 液晶 / 有機半導体 / 溶液プロセス / 薄膜 / 有機エレクトロニクス |
Research Abstract |
これまで予備検討を進めてきたペンタセンは優れた半導体特性を有するが、大気中で容易に酸化されてしまい詳細な検討を行うことが難しいため、耐酸化性に優れ、且つペンタセンと同程度の半導体特性を有するピセンを低分子有機半導体として用いた。まず、溶媒として用いる液晶の相構造に与えるピセン添加の影響について、これまでに検討したネマチック相だけでなく、層構造の分子配列を有するスメクチックC相についても検討を行った。ネマチック(N)相を示す4-n-プロポキシ安息香酸(3OBA)およびN相とスメクチックC(SmC)相の両方を示す4-n-オクチルオキシ安息香酸(8OBA)を溶媒とし、それぞれにピセンを添加して、示差走査熱量測定により液晶相温度範囲を評価した。ピセンを添加すると、各転移温度の低下度合は融点>SmC相-N相転移温度>N相-等方相転移温度となり、3OBAと8OBAのネマチック相温度範囲は若干拡大したが、8OBAのスメクチックC相温度範囲は縮小傾向を示した。これより、ピセンはネマチック相のような対称性が高い(配向性が低い)液晶相においては相構造を不安定化する効果は小さいが、対称性が低い(配向性が高い)結晶相やスメクチックC相においては相構造を大きく不安定化することが明らかとなった。そして、3OBAを溶媒としてピセン薄膜の作製を検討し、溶液プロセスによるピセン薄膜の作製に世界で初めて成功した。さらに、トップコンタクト型の半導体デバイスにおいて、薄膜表面の平滑性は電極との接触性やデバイス性能に影響を与えることが予想されることから、薄膜の表面形状に与える液晶溶媒の効果を検討したところ、3OBAがネマチック相を発現する温度で製膜すると、等方相を発現する温度で製膜した時に比べて、平滑な表面を有する薄膜を作製できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の影響により所属機関において研究設備を使用できない期間が3-6か月程度あったが、実験補助者を雇用することにより実験を効率よく遂行し、溶液プロセスによるピセン薄膜の作製を達成したことに加え、薄膜表面の平滑性に与える液晶溶媒の効果を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
デバイス系研究者との連携により、溶液プロセスにより作製したピセン薄膜の有機トランジスタとしての性能を評価する。そして、低分子有機半導体の配向が揃った大面積の薄膜作製を実現するために、溶媒の蒸発方法および基板の表面形状の影響を検討する。また、省エネルギー性の観点から、混合液晶を溶媒系に用いて製膜プロセスの低温化を検討する。さらに、ピセン以外の低分子有機半導体材料を用いて、溶液プロセスによる薄膜の作製とデバイス性能の評価を実施し、汎用性の高い薄膜製造技術の開発を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ピセン以外の低分子有機半導体および基板表面の改質等に必要な薬品や消耗品を購入する(物品費:250千円)。平成23年度に得られた成果の国際会議での発表および当初より計画していたデバイス系研究者との性能評価における連携を推進する(旅費:350千円、その他:100千円、次年度使用額:約110千円)。実験を効率良く遂行するために、実験補助者を平成23年度より引き続き雇用する(人件費:1,000千円)。
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Research Products
(1 results)