2011 Fiscal Year Research-status Report
生体分子の相互作用場を基盤にした蛍光性らせん超分子の構造転移と光機能制御
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23750229
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂尻 浩一 東京工業大学, 理工学研究科, 特任准教授 (90402213)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 蛍光 / らせん構造 / 超分子 |
Research Abstract |
研究代表者が見出した媒体に応じて超分子構造を転移させることにより多彩な蛍光色を呈する新奇な現象について、多角的な検討を通して、当該有機化合物が形成する超分子構造と光学特性を制御する要因を解明することを目的に研究を遂行した。 今年度は、対象としている化合物群、すなわちアミノ酸アルキルエステル基を導入したヘキサキス(フェニルエチニル)ベンゼン誘導体の置換基の効果を調査した。具体的には、アルキル鎖密度が大中小と異なる3種類の化合物を合成し、化合物の疎水性が超分子構造形成能力や光学特性などに及ぼす影響を検討した。 予定していた全ての化合物の合成に成功した。全ての化合物はクロロホルム濃厚溶液でリオトロピック液晶を発現した。さらにアルキル鎖密度が最も高い化合物では、サーモトロピック液晶を発現することを確認した。アルキル鎖密度の増大がサーモトロピック液晶という新たな性質を付与させることは意義深く、重要な知見である。一方、アルキル鎖密度の増大により希薄溶液中における超分子らせん構造の安定性は低下した。この結果は、種々の分光学的な測定から、アルキル鎖の混み合いがヘキサキス(フェニルエチニル)ベンゼン誘導体の芳香族コアの積層を妨げていることに起因することがわかった。この結果から推察される通り、アルキル鎖密度の高い化合物は、媒体に応じて超分子構造を転移させる現象を示さなかった。 超分子らせんの反転を伴う超分子構造転移を示す系は、現段階ではアルキル鎖密度の最も低い化合物のみである。しかしながら、超分子らせん構造の安定性や転移の原動力に関する手掛かりを得た。超分子らせん構造は幾何学的に嵩高い溶媒では不安定になること、超分子構造転移を引き起こすためには、溶媒の誘電率が効いていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究実施計画に沿って、実験を進めることができ、置換基の影響に関する知見を得ることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
置換基数(対称性)によって化合物の会合力と共役系が異なるため、超分子構造と光学特性が著しく変化すると考えられる。次年度では、当初の研究実施計画通り、置換基数の異なる化合物を合成し、平成23年度と同様の実験を行い、置換基数の影響を明らかにする。また新たな検討課題として、今年度見出したサーモトロピック液晶の相転移挙動を追加する。複数年度に渡り、並行して行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の慎重な使用の通達を受け、当初計画を存分に実行できる試料を確保していない。新たに追加した検討課題である液晶に関する研究では、多くの試料を必要とすることもあり、残額(次年度使用額)の主な使途は今年度合成した化合物の大量合成に当てる。また当初の次年度交付予定額については、予定通り次年度の実施計画を遂行するために使用する。
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